【目次】
- ∨まえがき
- ∨step1:これって認知症?迷ったときはこれでチェック!
- ∨step2:認知症かもしれない・・・そう思ったら専門医に相談!
- ∨step3:はじめての認知症介護で悩んだ時は‟ここ”に相談!
- ∨まとめ
まえがき
毎日一緒に暮らしている家族にある日突然‟認知症の症状”が現れたら・・・あなたはどうしますか?
つい昨日まで、ごく当たり前にできていたことができなくなった・・・ついさっき有った出来事もすぐに忘れて何度も何度も同じことを聞いてくるようになった。時には、さっき食べた食事のことさえ忘れるようになってしまった・・・
一緒に暮らしているご家族にこんな症状があらわれたとき、
「誰でも歳をとれば少しぐらい物忘れが進むでしょう?」「まぁ、このままひどくなるようだったら、そのうち病院にでも連れていけばいいかな・・・」などと、しばらく様子を見ていくのか、それとも、もっと物忘れが進んで症状が進行するときに備えておくのか、どちらを選択するかで、後に認知症介護にかかわっていく、介護者さんの生活が大きく変わることとなります。
認知症高齢者にかかわってくうえでは、初期の対応がとても大切です。
そして認知症の症状の変化を見逃すことなく、刻々と変わっていく症状に対して、適切な対応を行うことが、認知症介護での負担を軽減することにつながります。
また、初期の対応と同じぐらい大切なのが、後に症状が進行した時を想定して、介護者さんの負担が大きくなった時、いかに負担を軽減し、ストレスなく介護を続けられるよう備えをしておく。これもとても大切なことです。
では、次の章からは、ご家族に認知症の症状があらわれたとき、どのような対応をすればよいのか?どのような対応をすれば、介護者さんの負担を少なくすることができるのか?3つのステップにわけて解説していこうと思います。
step1:これって認知症?迷ったときはこれでチェック!
「うちのおばあちゃん、最近、忘れっぽくなってきたけど、これって単なる物忘れ?それともこれが認知症の始まり?」
一緒に暮らしている家族が、忘れっぽくなったり、同じことを繰り返すようになったりしたとき、日頃お世話をしているご家族にも、これが、歳相応の物忘れなのか?それとも認知症の始まりなのか?判断に迷うことがあるかもしれません。
「これって、どこかで検査しておいた方がいいのか・・・」
「それとももう少し様子を見ても大丈夫なのか・・・」
こんな時、誰にでも簡単に、認知症の兆候を知ることができるチェック方法があるのでご紹介しようと思います。
簡単にできる認知症チェック!
まずは、これからお伝えする内容に1つでもチェックがついたら要注意です。
□ 食事の時、やたら、醤油や塩などを使いたがる。昔に比べて、濃い味付けを好むようになった。
□ 髪の毛がボサボサでも、ひげが伸びていても、あまり気にしなくなった。
□ 外出するとき、身だしなみを気にしなくなった。
□ テレビのチャンネルを変えたり、電話をかけたりなど、ついこの間まで出来ていたことができなくなった。
□ 買い物に行くと、同じ場所を何度もウロウロして、同じものばかり買っていることがある。
□ お金の計算ができなくなった。
□ 新聞を読んだり、本を読んだりするのが面倒になっているようだ。
□ 季節に合わない服装を選んでいることが多くなった。
□ 洋服のボタンを1人では上手くかけられなくなった。
□ 普段の会話の中で「えっと・・・」「それは・・・」と言葉が出るまでに時間がかかるようになっている。
いかがでしょうか?
ここでご紹介した10個のチェックポイントの中で、1つでもチェックが付いたなら要注意です!
ではなぜチェックが1つでも付いたら要注意なのか?ですが、認知症の始まりを見抜くポイントの1つに、「嗜好や行動が急に変わる」ということがあります。
やたら濃い味付けを好むようになった場合には、濃い、薄いといった味覚の感覚が崩れている可能性がありますし、外出の際に身だしなみを気にしなくなった場合は、「変な恰好をしたら恥ずかしい」「みっともない」といった、羞恥心が欠落してきている可能性があります。
このような、日々のちょっとした変化が認知症の始まりである可能性でもあります。
認知症の物忘れと歳相応の物忘れの違いとは?
誰でも歳を取るにつれ、忘れっぽくなっていくものですが、認知症の症状では、忘れ方に大きな違いがあります。
例えば、ある日、用事で外出した時、年齢による物忘れの場合であれば、外出先で食べたものや、たまたま出会った人の名前など、出かけた先での断片的な出来事を忘れてしまう。この程度のことで済みますが、認知症による物忘れの場合では、外出したことすら覚えていない。自分がどこで何をしていたか、全く覚えていないというように、出来事そのものを忘れてしまいます。
また、歳相応の物忘れの場合は、自分が何かを忘れてしまったという自覚がありますが、認知症による物忘れの場合には、自分が何かを忘れてしまったという自覚もありません。
そして、認知症の物忘れは進行していきます。
先ほどお伝えしたチェックポイントの中にもありましたが、「お金の計算ができなくなる。」などは、今まで習慣化していた出来事の記憶が消え去ってしまうことが原因です。例えば、商店などで買い物をした際、いくら支払えばよい、支払ったあとのおつりはいくらである、といった出来事そのものの記憶が消えてしまうために、日常生活にも支障が出てくることにもなります。
さらに症状が進行してくると、「朝食事をしたことすら忘れてしまう」など、ついさっき起きた出来事すら簡単に忘れてしまうようになり、自分が忘れているといった自覚もないために、家族に何度も「食事をしていない」「早く用意して!」と訴えるようになります。これが歳相応の物忘れの場合であれば、食べた食事のメニューの一部を忘れるぐらいで、食べたことは忘れません。
このように、認知症による物忘れと、歳相応による物忘れでは、同じ忘れてしまうということだけでも大きな違いがあるのです。ですから、先ほどお伝えしたチェックポイントの中で、1つでも思い当たる項目があった場合、物忘れがさらに進行し、日常生活に支障が出る前に、早期に対応を行うことがとても大切になります。
では、早期に対応する方法として、どのようなことを行えばよいのか?にその対応方法ついて、次の章でさらに具体的に解説してみたいと思います。
step2:認知症かもしれない・・・そう思ったら専門医に相談!
先ほどの章では、歳相応の物忘れと認知症による物忘れの違いについて。そして、認知症なのか迷ってしまったときのチェック方法について解説しましたが、ここからは、先ほどのチェックリストで該当する箇所があった場合や、「これは、認知症がはじまっているかも・・・」と思われた場合、どのような対応をすればよいのかについて解説していこうと思います。
では、まず1つ目の対応方法ですが、「認知症の専門医」に受診してください。
では、なぜ「認知症の専門医」に受診することが大切なのか、それは、認知症の症状には様々なものがあって、専門の知識がない私たちには見分けが難しいことがあるからです。
認知症の症状だと思っていたら、専門医が検査した結果、じつは、うつ病や高齢者特有の精神病の症状だったり、診断の結果、脳に異常も見つからず、実は別の部分の体調悪化が原因で、一時的に物忘れの症状が出ていただけだったり・・・
このようなことは、高齢者さんによくみられることで、これも、専門知識の無い私たちにとって、歳相応の物忘れなのか?それとも認知症の始まりなのか?判断を難しくする1つでもあります。
ですが、家の近所に認知症の専門医が見つからない場合や、どのように探せばよいのかわからない場合には、まず、普段診察を受けている内科のお医者者さんなどがいれば、まずかかりつけのお医者さんに相談してみてください。
内科のお医者さんでも、ある程度、認知症についての知識を持っている場合もありますので、「どのお医者さんにかかればよいかわからない・・・」と迷った場合には、まず近隣の内科医の先生の診察を受けてみてください。受診した先の先生が、近隣の認知症専門医を知っていれば、紹介状を書いてくれるケースもあります。
参考までに、ご自宅の近隣で認知症専門医を探すホームページをご紹介しておきます。
では、次の章では、認知症外来に受診する際にぜひ知っておいてほしい3つのポイントについて解説してみようと思います。
認知症の専門医に受診する際の3つのポイント
では、ここからは、認知症の専門医に受診する際、ぜひとも知っておいてほしい3つのポイントについて解説していこうと思います。
まず1つ目のポイント
認知症のような症状がいつごろから現れたのか、そして、認知症の症状があらわれる前は普段どのような生活をしていたのか、最近大きな病気をしたことはないか、大きなケガをしたことはなかったか、などをできるだけ詳しく医師に伝えてください。
このポイントがなぜ大切なのか?その理由ですが、医師が診断をする際に、認知症の症状が現れる前と、現れた後でどのような症状が出てきたのか、またその原因となる病気やケガが無かったかなどがとても大切になるからです。
例えば、頭のケガをしたことがきっかけで認知症のような症状が現れた場合には、ケガをした際に頭を強く打ったことが原因で、脳出血や脳梗塞を起こし、それが原因となって起こる脳血管性認知症の疑いがあります。
また、ケガや病気も無く、突然認知症の症状が現れた場合には、加齢に伴い脳が縮んていったことが原因で起こる、アルツハイマー型認知症の疑いがあります。
その他にも、以前は毎日穏やかに過ごしていたのに、最近急に怒りっぽくなっていたり、食欲がなくなっていることや、昼間やたらとぼんやりしていることが多くなった場合では、レビー小体型認知症という病気である場合もあります。
このように、認知症を発症するには様々な原因があり、原因となる病気やケガ、そして認知症を発症する前と、発症後では本人の生活がどのように変わっていったのかがとても重要になります。
適切な診断を受けるためにも、受診の際には、症状が現れたのはいつぐらいからか、そして、その症状が現れる前はどのような生活を送っていたのか、また、原因となったかもしれない、大きな病気やケガは無かったか、できるだけ詳しく医師に伝えてください。
言葉で上手く伝える自信が無かったら、簡単なメモに書いて、医師に読んでもらっても良いと思います。
認知症への対応で困っていることは何ですか?
では、ここからは2つ目のポイントに入ります。
2つ目のポイントは、
「認知症の症状が現れたことで、今困っていること」「家族が認知症への対応で悩んでいること」を受診の際に、医師にできるだけ詳しく伝えることです。
例えば、「最近、夜になると家の中をウロウロと動き回るようになって、なかなか寝てくれない・・・」
「今日の日付や、曜日などを何度も何度も聞いてくる。一度説明してもすぐに忘れるから、対応する家族は大変です・・・」など、今、家族が困っていることを、できるだけ具体的に伝えることが、その症状を改善する治療方法などを検討する際に必要な情報源となるからです。
夜、なかなか寝付けないでいて、家の中を動き回ることが続いているようであれば、就寝前の睡眠薬が処方されるときもありますし、日中興奮して、家族の言うことがなかなか伝わらない状況であれば、興奮を抑えるためのお薬が処方されるときもあります。
また、以前に比べて物忘れの症状が進んでいるようであれば、脳の画像診断なども行ったうえで、脳の症状に見合ったお薬が処方される場合もあります。
これは先の章でもお伝えしたことですが、家族が困っていることや悩んでいることを伝える際は、その時の様子をできるだけ具体的に伝えることが大切です。
セカンドオピニオンを持つことも大切です。
では、いよいよ、認知症の専門医に受診する際、ぜひとも知っておいてほしいポイントの最後となる、3つめのポイントの解説に入ろうと思いますが、本題に入る前に、1つ質問をさせてください。
あなたは「セカンドオピニオン」という言葉を聞いたことがありますか?
セカンドオピニオンは日本語で言うと「第二の医師」という意味です。では「第二の医師」とは何かですが、何かの病気を治すために、いつものかかりつけの医師に診察を受けたが、医師から受けた診断内容や治療方針について、別の医師からも治療についての意見を受けることを「セカンドオピニオン」と言います。
例えば、認知症の症状について、Aという医師に相談をし、治療方法やお薬の内服指示をもらったが、治療を開始後、家族の期待していたほどの改善が見られない。そういった場合に、Aという医師とは別の医師に、A医師に伝えた同じ相談内容を別の医師に伝えることで、A医師から受けた診断内容が適切であったのかを判断することができます。
ただし、ここで注意してほしいことがあって、Aという医師から受けた診断内容に疑問があったとしても、すぐに受診先を切り替えることはしないでください。
今診察を受けた医師に、「セカンドオピニオン」についてきちんと話をしたうえで、紹介状を書いてもらい、別の医師に診察を受けください。
最初に診察を受けた医師に疑問があったとしても、紹介状も無く、全く新しい受診先に行くと、また一から検査などを受けなければいけませんし、紹介状を持っていないことで、総合病院などでは初診料が発生することも多々あります。
紹介状の中には、診察をした医師からの検査結果などが記載されていて、その内容を見たうえで「セカンドオピニオン」となる医師が診察内容などを検討する大切な情報となりますので「セカンドオピニオン」を持つ際には、必ず紹介状を書いてもらったうえで診察を受けてください。
step3:はじめての認知症介護で悩んだ時は‟ここ”に相談!
認知症の専門医に診断を受け、認知症の治療も始まった。ですが、今現在、認知症の治療に特効薬はありません。治療の目的はあくまで、症状の緩和と進行を遅らせることが目的であって、認知症の症状そのものが無くなることはないのが現実です。
認知症の症状の進行はその人によって様々ですが、物忘れなどの症状がすべてなくなることは無く、治療が開始された後、一緒に住んでいる家族の方が直面する課題は‟認知症の介護”です。
「ついこの間までは、自分の身の回りのことは何とかできていたのに・・・」
「最近では、お風呂に入っても、自分で体を洗うことができなくなっている・・・」
「薬の飲み忘れや間違いが多くなって、毎日確認していないと危なくて・・・」
このように、認知症の症状が進行すると、日々の生活において、一緒に住んでいるご家族の負担も徐々に大きくなっていくのが、認知症介護の現実ですが、徐々に増えていく介護の負担と、家事や育児、仕事との両立などに悩んだ時、あなたの今住んでいる家の近所に、認知症介護の悩みに答えてくれる相談窓口があることをご存知でしょうか?
この相談窓口が地域包括支援センターです。
この地域包括支援センターは、介護保険制度で定められた、介護で困っている方たちのために、市区町村が設置している介護の相談窓口です。
この地域包括支援センターには、医療の専門家である看護師と、行政サービスなどに精通した社会福祉士という資格を持った職員、そして、高齢者介護や認知症介護、介護保険サービスなどに精通した主任ケアマネジャーという資格を持った職員が常時配置されていて、医療や介護での悩み、困りごとなどについて、負担を軽減するための助言を専門家からもらうことができます。
在宅介護を継続するうえで、後に必要となってくる、介護サービスの利用方法や、サービスの種類、利用料金や、サービスを利用するために必要な手続きの方法なども、このセンターですべて教えてくれますので、認知症の治療と、家での介護、その他日々の生活との両立で燃え尽きる前に、どんな些細な悩みであっても、専門家に適切な助言をもらい、少しでも認知症介護の負担を軽減できるようにしてみてください。
同じ認知症の悩みを経験した人の経験談を参考にしてみませんか?
認知症の介護は、いつ終わりが来るかわからない日々が続きます。そのような日々が続くことで、介護者さんは強い孤独感を感じている方もとても多くいらっしゃいます。
終わりが見えず、答えも見つからない。どうすればこの状況が改善するのかもわからない。このような状況になったとき、介護者さんにとって心の支えとなるのが、同じ悩みを経験してきた人からのアドバイスではないでしょうか。そんなアドバイスが欲しくなった時、ぜひこのサイトを参考にしてみてください。
このサイトは、全国47都道府県に支部を持っている、「認知症の人と家族の会」の公式サイトで、サイトの中で、今、認知症介護にかかわっている家族の方の体験談や、無料電話相談窓口などが解説されています。
また、お住いの地区にある「認知症の人と家族の会」の支部の連絡先も記載されていますので、そういった場を通じて、同じ認知症介護の悩みを持っている人と交流を深めることもできます。
今、自分が抱えている悩みを、すでに体験してきた人の経験談は、これから認知症介護にかかわっていく介護者さんにとって、何よりの強い味方になってくれると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
毎日暮らしている家族に、ある日突然、認知症の症状が見られるようになった時、お世話をしている介護者さんはどのような対応をすればよいのか、ここまで3つのステップにわけて解説してきました。
歳相応の物忘れと、認知症による物忘れの違いや、症状の判断がつかないときのチェック方法。専門医に診断を受ける際のポイントや、認知症介護が始まるときの相談窓口など、ここまで解説してきた内容が、今、家族のお世話をしている方や、認知症介護に経験が全くない方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
また、このサイト内で、これから認知症介護にかかわっていく方に向けて、このような記事もご紹介していますので、是非とも参考にしていただければ幸いです。