脳の健康について(全年代の脳) 脳の加齢や認知症(シニアの脳) All

009 認知症をわかりやすく説明するとこうなります。

更新日:

まえがき

今現在、日本全国に、認知症と診断された方がどれぐらいの数いるか、ご存知でしょうか?

平成27年時点で、65歳以上の高齢者は3395万人で、日本の総人口に占める割合では、26.8%に上り、65歳以上の高齢者人口3395万人のうち15.5%である525万人が認知症の患者数であるというデータもあります。
【調布市の将来人口推計】より抜粋

そして、この総人口に占める高齢者の割合は、今後さらに増加すると言われており、平成37年には、65歳以上の高齢者は3,657万人となり、日本の総人口に占める割合では、30.3%に上ります。そして、この3,657万人のうち20.0%であるおよそ730万人、65歳以上の5人に1人が認知症患者になるというデータも発表されています。

【内閣府ホームページ:第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(3)】より引用

このようなデータからもわかるように、もう、認知症は特別な病気ではありません。今後、家の近所に住んでいる高齢者さんが認知症になったり、あなたのご家族が認知症を発症しても、なんら不思議ではない病気なのです。

では、認知症という言葉を聞いたとき、あなたはどんなことを思い浮かべますか?

「物忘れがどんどんひどくなる病気?」

「外にでたら1人で家に帰れなくなって、徘徊がはじまる病気?」

「家族の顔や名前がわからなくなってしまう病気?」

「年齢とともに脳が縮んで、はじまる病気?」

認知症と聞くと、このようなことを浮かべる方が多いのではないでしょうか。

ですが、認知症を発症する原因には、脳が縮む以外にも、様々な発症の原因があり、発症後の症状にも、物忘れがひどくなる以外にも、様々な症状があります。

では、今回は、この認知症について、知られているようで、意外と知られていない、発症の原因や、発症後の様々な症状、発症後の対応や予防法などについて、認知症について、全く知識の無い方にも理解していただけいるよう、事例なども交えながら解説していこうと思います。

認知症チェック!こんなことがあったら要注意!

今回は、今までに認知症介護にかかわったことが無い。認知症についての知識も経験も全く無い方でも理解をしていただけるよう解説していこうと思っていますが、その前に、認知症の始まりを早期発見するための簡単なテストを行っていただこうと思います。

どんな病気でも、早期発見が大切です。これは認知症にとっても同じことが言えて、症状の始まりを早期に発見することで、症状の進行を遅らせることができたり、後の介護への負担を軽減することにもつながります。

このテスト項目は、認知症の専門医が行っているような医学的見地に基づいたものではありません。あくまで、日々の暮らしの中で、「こんなことが見られたら、専門医に相談する目安」になるものですから、あまり難しく構えないで、まずは気楽に行ってみてください。

「これって認知症の始まりかも・・・」認知症チェック

 

Check1 物忘れが進んでいるかも・・・

同じことを何度も何度も聞いてくる。返答してもまた、同じことをすぐに聞いてくる。

▢ 自分で何かを片付けても、どこに片づけたかすぐに忘れてしまう。

▢ 自分でどこかに片づけたものが見つからないと「誰かに盗まれた!」と騒ぐ。

Check2 理解力・判断力が低下しているかも・・・

▢ 新しい出来事への順応性が無くなっている。

▢ 会話がかみ合わないことが多くなった。

▢ 子供でもできる簡単な計算もできなくなった。

Check3 場所や、時間を忘れるようになったかも・・・

▢ 外出すると、家に帰るまでの道に迷うようになった。

▢ 病院への通院日や、知人との約束を忘れることが多くなった。

Check4 最近、急に人が変わったように思う・・・

▢ ちょっとしたことですぐに怒るようになった。

▢ 自分の失敗を、他人のせいにするようになった。

▢ 他人の意見を聞き入れず、やたらと頑固になった。

Check5 不安を訴えることが多くなったかも・・・

▢ 「頭がおかしくなった・・・」と何度も訴える。

▢ 部屋に引きこもることが多くなった。

▢ 前は興味を持っていたことなのに、興味を示さなくなった。

いかがだったでしょうか。ここでご紹介したのは、認知症を早期発見するための簡単なテストでしたが、もし、いくつか気になる項目があったなら、一度、認知症の専門外来に受診することをお勧めします。

※全国にある認知症専門外来一覧

また、今現在、該当する項目がなかったとしても、この認知症チェックをぜひ、今後の参考にしていただければと思います。

なぜ、認知症になるのか?

先の章でお伝えしました、認知症チェックはいかがだったでしょうか?

この認知症チェックを行っていただいて、もしも、疑問に感じることや、思い当たることがあったのなら、ぜひ一度、認知症の専門医に相談してみてください。

もしも、専門医がどこにいるのかわからない場合には、ご自宅近隣の専門医を探すことができる、このようなサイトがインターネット上にありますので、ぜひ参考にしてみてください。
※自宅の近所で認知症専門医(ものわすれ外来)を探してみる。

認知症の症状を緩和、軽減し、認知症を発症した方への介護での負担を少しでも軽減するためには、何より、早期の発見が大切になります。

まえがきの章でもお伝えしましたが、平成27年で、65歳以上の高齢者様が3395万人。その3395万人のうち、15.5%である約6人に1人が認知症の患者数というデータがあり、これが平成37年になると65歳以上の高齢者は3,657万人となり、この3,657万人のうちおよそ730万人、65歳以上の5人に1人が認知症患者になるというデータも発表されています。

このデータからわかるように、認知症はもう特別な病気では無く、誰もが認知症になっても決して不思議でないことはご理解いただけたと思います。

では、なぜ、ついこの間までは、それほど物忘れの症状も無く、身の回りのことぐらいは1人で何とかできていたのに、急に、すぐに忘れるようになったり、何度も何度も同じことを聞いてくるようになってしまったのか、何が原因で、認知症になってしまったのか?こんな疑問を持たれませんか?

風邪や腹痛などの病気であれば、「疲れが原因で免疫力が低下して風邪になった・・・」「冷たいものを食べすぎて、お腹が痛くなった・・・」など、なんとなく発症した原因が思い当たると思いますが、認知症の場合、発症する原因は何?と聞かれても、「脳が縮んだから?」「歳を取ったから?」ぐらいで、明確な原因をすぐに言える方は少ないのではないでしょうか?

では、認知症になってしまう原因とは?認知症を発症する原因にはどんなものがあるのか?次の章でさらに詳しく解説してみようと思います。

脳に〇〇が溜まると認知症になる!

認知症を発症すると、今さっき起きた出来事をすぐに忘れるようになったり、簡単な計算ができなくなったりしますが、なぜ、認知症を発症するとこのような症状があらわれるのか?このような症状は、脳に‟あるもの”が溜まることが原因となって起こります。その‟あるもの”とは・・・

認知症の原因は脳に溜まったゴミだった!

日々の生活の中で、パソコンを使っている方は多いと思いますが、パソコンも買ったばかりのころは電源を入れるとすぐに画面が立ち上がり、起動後もスイスイとネット検索などができたのに、買ってから何年か経つと、電源を入れてから画面が立ち上がるまでに時間がかかるようになりませんか。

画面が立ち上がった後も、メールを読んだり、ネット検索でページを開くまでに時間がかかるようになったりなど、このようなことは、パソコンを使っている方であれば誰でも経験することだと思います。

買ったばかりのパソコンが、何年も使っているうちに動きが遅くなる。この原因の多くは、使っているうちにパソコンのデータを保存する記憶部品であるハードディスクの空き容量が少なることで起こることが多いようです。

買ったばかりのパソコンには、必要最低限のソフトやアプリしか入っていませんが、使っているうちに、画像編集ソフトなどのアプリをパソコンにダウンロードしたりすることで、パソコンの記憶部品であるハードディスクの容量がどんどん少なくなっていきます。この記憶容量が少なることで、パソコンの動作が遅くなったり、起動して画面が立ち上がるまでに時間がかかるようになるのです。

この、パソコンの例を、私たちの脳に例えてみましょう。

私たちの脳は、寝ているときを除いて、休むことなく絶えず活動しています。この、脳が活動をしているとき、脳の中には‟あるもの”が溜まっていきます。この‟あるもの”とは、βアミロイドと呼ばれるもので、脳の神経細胞から分泌される物質です。

このβアミロイドは、脳の老廃物、通称‟脳のゴミ”とも言われており、このβアミロイドが一定量に達すると、次にタウというたんぱく質が脳内に溜まり、脳の神経細胞を破壊します。そして、この物質が脳内に蓄積されると、アルツハイマー型認知症を発症する原因とも考えられています。

脳のゴミを溜めないためには・・・

私たちの身体の中には、様々な老廃物が日々溜まっています。その溜まった老廃物は、排尿や排便、または身体の中のリンパ液によって体の外に運ばれ排出されています。

では、脳内にゴミを溜めないためにはどうすればよいのか?溜まった脳のゴミはどのようにすれば排出することができるのか?その方法とは、その人に合ったにあった適切な睡眠にあると言われています。

脳の神経細胞には隙間があり、その隙間は、グリアという細胞や血管で埋め尽くされています。脳の隙間はとても狭く、脳内の髄液などで脳のゴミを排出するには、不十分であると考えられていましたが、グリアという細胞は、睡眠中に縮むことがわかり、このグリアという細胞が縮むことで、脳に大きな隙間ができることがわかりました。

このように、睡眠中の脳には、大きな隙間ができるために、脳の老廃物である、脳のゴミを排出する動きも活発化するそうです。この、脳のゴミを排出する働きを活発にするためには、その人に合った適切な睡眠がとても大切になるのです。

適切な睡眠時間とは、年齢によって異なるようです。例えば、20歳代では、7時間ぐらいが適切な睡眠時間と言われていて、40歳代後半では、6時間弱と言われています。この適切な睡眠時間の目安は、あくまでも目安であって、その人に合った適切な睡眠時間とは、朝起きたときにスッキリと目が覚める時間が最も適切な睡眠時間だそうです。

高血圧や糖尿病が原因で認知症になる!

認知症を発症する原因として、先ほどの章で、脳の中にβアミロイドという脳のゴミが溜まることで脳の神経細胞が破壊され、結果、アルツハイマー型認知症を発症する原因となることについて解説しました。

βアミロイドという脳のゴミが溜まることで発症するアルツハイマー病は、認知症を発症する原因の7割を占めるとも言われていますが、その他にも、認知症を発症する原因の2割を占めるものがあります。

それは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害です。そして、その脳血管障害を引き起こすリスクを高めるのが、糖尿病や高血圧といった、生活習慣病と呼ばれているものです。

この章では、認知症を発症する原因の2割を占める脳血管障害を引き起こすリスクを高める原因とも言われている、糖尿病と高血圧について、解説します。

糖尿病を発症するとアルツハイマー病を発症しやすくなる!

私たちが生きていくためには、血液中に存在するブトウ糖がなくては生きていけませんが、このブトウ糖は多すぎてもいけません。

この血液中のブトウ糖は、食事をすることで一時的に増えるのですが、このブトウ糖は、すい臓という内臓器官から出るインスリンというホルモンによって、体内に取り込まれます。このインスリンの働きによって、ブトウ糖は増えすぎることなく一定量に保たれているのです。

そして、このブトウ糖(血糖値)を一定量に保つ働きを持つ、インスリンの働きが悪くなると、ブトウ糖を体内に取り込めなくなってしまいます。ブトウ糖を体内に取り込めない状態が続くと、血糖値が高くなり、糖尿病を発症する原因となります。

ではなぜ、糖尿病を発症すると、アルツハイマー病を発症しやすくなるのか?ですが、脳の神経細胞のエネルギー源は血液中の糖によって賄われています。その糖を取り込むために大切な働きをするのがインスリンです。このインスリンの働きが悪くなることで、脳の神経細胞に必要な糖を取り込めなくなり、脳の神経細胞が機能しなくなってしまいます。

また、最近の研究で、アルツハイマー病を発症している脳では、脳の神経細胞の機能を支えるグリアという細胞へ働きかけるインスリンが不足し、糖を一定量取り込めなくなることが認知症の進行に影響するとも考えられているようです。

さらに、糖尿病を発症した人がアルツハイマー病を発症しやすいもう一つの原因に、糖尿病を発症することによって起こる、脳の動脈硬化があげられています。

動脈硬化が進むことで脳梗塞の発症リスクが高くなり、脳梗塞を発症することで、脳血管性認知症を発症する原因ともなります。さらに、血糖値が高くなることで、脳内でのインスリンの働きが悪くなり、脳の神経細胞を破壊する「脳のゴミ」であるβアミロイドが増えやすくなるといったデータもあるようです。

脳が委縮するとなぜ認知症になる?

認知症を発症する原因について、「脳が委縮すると認知症になる」「高齢になって脳が縮むと認知症になる」このようなことを聞いたことがある方も多いと思います。

では、なぜ「脳が委縮すると認知症になるのか?」「脳が縮むと認知症になるのか?」この理由についてすぐにお答えできますか?「聞いたことはあるけど、その理由を聞かれると・・・」このような方も多いのではないでしょうか。

ではここからは、なぜ「脳が委縮すると認知症になるのか?」なぜ、「脳が縮むと認知症になるのか?」その理由について解説してみようと思います。

なぜ、脳は委縮するのか?

脳が委縮する原因の代表的なものとしては「脳神経細胞の減少」があります。人間の脳は生まれてから3歳までに80%が完成し、20歳ごろには全体的な完成に至ると言われています。また、脳全体には140億個の神経細胞があると言われていますが、この140億個の神経細胞の内、日々10万個の神経細胞が失われているとも言われています。

そして、一度失われた脳の神経細胞は再生されることはありませんから、20歳ごろに完成のピークを迎えた脳の神経細胞は、その後年齢を重ねるごとに徐々に減っていき、脳全体のボリュームも減っていきます。これが脳の萎縮と言われるものなのです。

脳の萎縮には個人差があると言われていて、委縮の程度や、委縮する部位によってもあらわれる症状は様々です。運動機能が低下する人もいれば、物忘れが進む人もいたり、また委縮が見られても、認知症の発症に至らない場合もあるようです。

また、脳の萎縮には、年齢によるもの以外にも様々な原因がありますので、ここでいくつかご紹介します。

過剰なアルコール摂取が原因で脳が委縮する

アルコールを過剰に摂取すると、アルコールの成分であるエタノールによる一次性(直接性)障害や、メタノールによる両側被殻の出血性壊死などがおこり、脳の萎縮につながると言われています。

喫煙が原因で脳が委縮する

喫煙によるニコチンの摂取が脳の血管を収縮し、それが脳血管の詰まりを起こすことで脳に十分な酸素が運ばれなくなる原因になります。脳に十分な酸素が運ばれなくなると脳が酸欠状態になり、結果、脳の萎縮の原因ともなると言われています。

過剰なストレスが原因で脳が委縮する

ストレスの感じ方に個人差があるものの、過剰なストレスが脳の萎縮につながることが、最近の研究でわかってきたようです。

ストレスに深く関係するものとして、「コルチゾール」という物質があります。このホルモンは副腎から分泌され、血流にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たしています。

「コルチゾール」は役割を終えると脳に辿り着き、そこで脳に吸収されます。ところが、過剰なストレス状態が長時間続くと、この「コルチゾール」が過剰に分泌され、脳に溢れてしまいます。この状態が続くと結果、脳にダメージを与えることになると言われています。

過去にアメリカのアリゾナ州大学で行われたネズミへの実験では、ネズミを特別な金網に閉じ込めるなどして、慢性的なストレスを与え続けたネズミと、ストレスを与えないネズミで比較したところ、ストレスを与え続けられたネズミは、脳の神経細胞の突起が明らかに減少し、脳の海馬に明らかな違いがみられたとの結果が出たそうです。

これは、ストレスを与え続けられたことによる、脳に溢れた「コルチゾール」の働きが原因であると考えられたそうです。

では、なぜ脳が委縮すると認知症になるのか?

私たちの脳は、年齢を重ねていくにつれ、少しずつ脳が縮んでいきます。これを脳の萎縮と呼びます。一般的には20歳代後半から少しずつ脳の萎縮が始まると言われており、65歳ぐらいでは、画像では比較すると、肉眼でわかるぐらいに変化がわかるようになります。

脳が委縮すると認知症を発症すると考えられていますが、一概にはそうとも言えない場合もあります。また、脳が委縮する部位によっても現れる症状は様々で、脳の上面にある頭頂葉が委縮すると、認知症の代表的な病気であるアルツハイマー型認知症を発症すると言われています。

また、脳の前部にある、前頭葉が集中的に委縮すると、前頭側頭型認知症(ピック病)という認知症を発症する確率が高まります。前頭葉は、人間の思考、意思、創造力などをコントロールする機能を持つ部位で脳の司令塔とも言われていて、この部位の脳細胞が減少すると、非常識的な言動を取るようになったり、働き盛りの世代である方が、万引きなどの犯罪行為を行ってしまうこともあるそうです。

脳の後方にある後頭葉に萎縮が顕著にみられると、パーキンソン病によく似た症状がみられる、レビー小体型認知症を発症する確率が高まると言われています。

このように、「脳が委縮すると認知症になる」とは、脳の細胞が減少することによって、脳が持っていた考える能力や記憶力、感情を抑制する能力などの機能が低下することによって、認知症によくみられる、物忘れの症状やもの取られ症状などが起こるのです。

認知症と歳相応の物忘れはまったく別物です!

誰でも歳をとれば、少しづつ忘れっぽくなっていくものです。

「最近うちのおばあちゃん、同じことを何度も何度も聞いてくるようになって・・・」
「なんだか、最近、ずいぶんと物忘れがすすんだようだけど・・・」
「これってもしかして、認知症が始まったのかな・・・」

同居されているご家族がご高齢者さんだと、どこのご家庭でもこのようなことがあるのではないでしょうか。

年齢を重ねることで脳が委縮することや、脳が委縮することで認知症を発症するリスクが高まることについては先の章でもお伝えしましたが、認知症を発症していない方でも、歳をかさねていくとともに、「ご近所さんの名前がすぐに出てこなくなった」「今日の曜日を勘違いするようになった」このようなことは決して珍しいことではありません。

このような、「人の名前がすぐに出てこない」「曜日をまちがえてしまう」といったうっかり忘れと、認知症を発症したことによる物忘れとは大きな違いがあります。

では、「老化によるうっかり忘れ」と「認知症の症状による物忘れ」にはどのような違いがあるのか?また、老化によるうっかり忘れと、認知症による物忘れを見分けるポイントはどのようなものなのか?症例も交えながら解説していこうと思います。

こんな症状は歳相応の物忘れです!

⒈古い友人やテレビでよく見るタレントさんの名前がすぐに出てこない。

→ 誰かがヒントを与えれば「あ、そうだった」と思い出せれば、これは歳相応の物忘れです。

⒉昨日の夜食べたご飯の献立が思い出せない。昨日の夜、ご飯を食べたことはしっかり覚えている。

→ 昨日の夜、ご飯を食べたという‟自分の体験”は覚えているので、これは歳相応の物忘れです。

⒊「あれ、今何しようとしたんだっけ?」と自分が何かをしようとしたことを忘れてしまう。

→ 自ら「何かをしようとしていた」という自覚があるので、これも歳相応の物忘れです。

⒋家電製品の使い方がなかなか覚えられない。

→ 最近の家電製品には、様々な機能が付いていたり、ボタンがたくさんあったりと、ご高齢者さんにとって、操作や機能を覚えるのは大変なことです。ですが、テレビのリモコンの操作や家電製品の機能をなかなか覚えられないのは、脳の記憶機能が新しい情報を上手く取り込めない老化現象の1つです。ですから、これも歳相応の物忘れです。

⒌部屋の中にいつも置いてある、時計や財布の置き場所を忘れてしまう。「時計」「財布」といった探し物がなんであるかは自覚している。

→ 自分で、「何が見つからないのか」ここが自覚できているので、これも歳相応の物忘れです。

こんな症状は認知症による物忘れです!

⒈古い友人やテレビでよく見るタレントさんの名前がすぐに出てこない。

→ 名前のヒントを教えても名前が思い出せない、もしくは言葉が出てこないようであれば、認知症による物忘れです。症状がひどくなってくると、ヒントを教えてあげても「その人誰?」などと、その人と会っていた記憶すら忘れてしまいます。

⒉昨日の夜食べたご飯の献立が思い出せない。

→ 認知症による物忘れでは、献立だけでなく、食べたことすら忘れている場合がほとんどです。献立のヒントを教えてあげても思い出せない。さらに「昨日は食べてない!」などと言ったら、認知症による物忘れの症状です。

⒊「あれ、今何しようとしたんだっけ?」と自分が何かをしようとしたことを忘れてしまう。

→ 認知症による物忘れの場合は、「何かをしようとしていた気がする」ぐらいの曖昧な自覚です。何かをしようとしていたという、自覚を言葉に出したり、行動に移すことができず、ただその場をウロウロとするようであれば認知症による物忘れです。

⒋家電製品の使い方がなかなか覚えられない。

→ テレビやエアコンのリモコンを、「テレビを見るための道具」「部屋を温めたり涼しくする道具」というように認識できていて、そのうえで、使い方が覚えられないのであれば歳相応の物忘れですが、リモコンなどを「何かをするために必要な道具」と認識できず、ただ手にとっているだけであれば、認知症による物忘れです。

⒌部屋の中にいつも置いてある、時計や財布の置き場所を忘れてしまう。

→ 第三者から見ても、本人が「見つからない」と訴えているものが確かにあった物であれば、歳相応の物忘れですが、ありもしないものを探しだしたり、見つかったとしても、いつも違う場所にしまってあったり、探し物の名前すら出てこない場合であれば認知症による物忘れです。

歳相応の物忘れと認知症の物忘れを見分けるポイント

認知症による物忘れも、歳相応の物忘れも、何かを忘れているという点では同じですが、同じ物忘れでも、認知症の物忘れと歳相応の物忘れを見分けるポイントについて解説してみようと思います。

歳相応の物忘れの場合には、人の名前が出てこなかった時、誰かがヒントを教えてあげれば思い出せる。名前が出てこないけど、顔はぼんやりとでも思い出せる。このように、過去の記憶を、自分で引き出すことができるのが歳相応の物忘れです。

ですが、認知症による物忘れの場合だと、ヒントを与えても名前が出てこない。「近所の人だよ」と明確にヒントを与えても、その人の顔も思い出せない。ひどい場合だと「そんな人にはあったことが無い」と、過去に合った記憶すら忘れています。

この違いはなぜ起こるのか?そのヒントは、人がものや出来事を記憶し思いだすために必要な、3つの過程にあります。

人が何かを記憶し、記憶したことを思い出すには、3つの過程をたどります。

まず1つ目は、覚える過程。2つ目が、覚えたことを保持する過程。そして3つめが、覚えたことを引き出す過程です。

歳相応の物忘れの場合には、3つめの過程である、覚えたことを記憶の奥底から引き出す機能が衰えます。ですが、1つ目の過程である、覚える過程と、2つ目の過程である、覚えたことを保持する過程の機能は保たれていることが多いので、何かヒントを与えたり、時間の経過とともに保持された記憶を思い出すことができます。

ですが、認知症による物忘れの場合だと、3つめの覚える過程が衰えるだけでなく、1つ目の覚える過程、2つ目の覚えたことを保持する過程も衰えるために、思い出そうとする以前に、?覚えていない”という現象が起こります。

朝起きて突然、「昨日から何も食べていない」と訴えがあったとします。この場合、歳相応の物忘れであれば、昨日の献立までは思い出せなくても、1つ目の過程である、覚える過程が衰えていなければ、「何を食べたか思い出せないけど、食べることは食べた」と覚えているので、「昨日から何も食べていない」というような訴えは起こりません。

ですが、認知症による物忘れの場合では、1つ目の覚える過程や、覚えたことを保持する過程が衰えていることがほとんどです。ですから、いくら「昨日、たべたでしょう」と伝えたところで、本人が記憶できていないので、いくら説明したところで会話は一方通行になってしまうのです。

ではここでもう一度、歳相応の物忘れと、認知症による物忘れを見分けるポイントについてまとめてみます。

歳相応の物忘れ

3つめの過程である、「覚えたことを引き出す過程」は残っています。しかし、記憶をしたことを思い出す、もしくは、過去の記憶を引っ張り出す機能が衰えている場合があるので、人の名前や、場所、物の名称などがすぐに口に出せないことがあります。

ですが、記憶する機能は、少なからず残っている場合があるので、なにかヒントを与えれば思い出せたり、時間の経過とともに、自ら過去の記憶を引っ張り出し、名前や名称を口に出せる場合が多いです。

認知症による物忘れ

認知症による物忘れの場合には、3つめの過程である、「覚えたことを引き出す過程」が衰えるだけでなく、1つ目の「覚える過程」や2つ目の「覚えたことを保持する過程」も衰えています。ですから、いくらわかりやすいヒントを与えても、「覚えていない」ので、記憶を引っ張り出すことすらできないのがほとんどです。

認知症と間違えてしまう病気がある!

認知症にはざまざまな症状がありますが、認知症の中には、症状がとても似ていて、認知症と間違えてしまうぐらいによく似た病気があることをご存知でしょうか。ここでは、そんな、認知症と間違えてしまうくらいによく似た病気にはどのようなものがあるのか。その、よく似た病気にはどのような症状や特徴があるのか、解説してみようと思います。

うつ病

夜、眠れないと訴えることが多くなった。以前であれば自分でできていたことなのに、間違いが多くなった。何を話しかけても、興味を示さなくなって、いつもぼんやりしている。さっき聞いたことでも、すぐに忘れている。このような症状があらわれると、つい「認知症がはじまった・・・」と思ってしまうかもしれませんが、これは、高齢者に多くみられる、「老人性うつ病」の可能性があります。

認知症とよく似た症状が多くみられますが、これからお伝えする症状があらわれた場合には、一度、かかりつけ医などに受診された方が良いでしょう。

老人性うつ病には以下のような症状や特徴があります。

不安を強く訴える

年齢による物忘れがあらわれた場合などに、「頭がおかしくなった」「最近、わけがわからない」などと訴え、意味もないのに家の中をウロウロと歩き回ったり、突然、部屋の中にあるものを動かし始めたりなど、不穏な動きをすることがあります。

無気力になる

こちらから何かを聞いてみても、すぐに「わからない」「知らない」と答えたり、答えを返すことも無く、その場からいなくなったりします。

これを、つい認知症による物忘れの症状と間違えてしましそうですが、高齢による、記憶力の低下や軽いもの忘れである場合もありますが、この多くが、「興味が無い」「何を聞かれても無気力」からくる、いい加減な返答である場合が多いです。

夜間の不眠が続く

認知症の症状の1つに「夜間の不眠」や「昼夜逆転」がありますが、老人性うつ病を発症すると、同じように、「夜、眠れない」と訴えることが多くなります。

認知症を発症した方の場合は、「昼と夜の違いがわからなくなる」などがありますが、老人性うつ病の場合には、夜が近づくにつれて不安感を強く感じることから、ベッドに入ってもなかなか寝付けない場合が多くみられます。夜眠れないことで、昼間ウトウトすることが多くなり、それが夜間の眠りを妨げる原因になることも多くみられます。

せん妄

「老人性うつ病」以外にも、認知症とよく似ていますが、高齢者特有の「せん妄」という病気があります。

この病気では、突然、大きな声を出したり、理由も無く、家の中をウロウロと動き回るなどの症状が現われます。このような症状は、認知症の症状とよく似ていますが、これも高齢者さんに多く見られ「せん妄」という症状である可能性があります。

せん妄には以下のような症状や特徴があります。

幻覚を訴える

突然、ありもしないものが見えたと騒いだり、「部屋の中に知らない人が入ってきた」「部屋の中のものが誰かに盗まれた」などと訴えることがあります。また、夜になると、不安を強く訴え、「さっきも誰かが部屋にいた」「天井に虫がいる」などとありもしない話を何度も訴えるようになります。

突然大声を出す。

急に興奮状態になり、その場にそぐわない言動を始めたり、突然大声を出すことがあります。興奮状態にあるときには、普段から身近にいるご家族などが興奮をおさめようとしても、逆に暴力行為に訴えることもあります。

急に会話がかみ合わなくなる

今まで普通に会話ができていたのに、突然ソワソワと落ちつきが無くなり、こちらからの返答に対して、意味が分からない答えを返したり、何かをたずねても、いつもだったら簡単に返答できるような内容なのに、「わからない・・・」と答えたりします。

また、人によっては急に忘れっぽくなったり、いつもだったら簡単にできることができなくなったりと、認知症ととてもよく似た症状があらわれる場合もあります。

正常圧水頭症

くも膜下出血などが原因となって、脳内に髄液が過度に溜まり脳を圧迫することで、認知症とよく似た症状があらわれる病気の1つに、「正常圧水頭症」という病気があります。

脳の萎縮などが原因となる認知症では、症状の改善までに時間がかかりますが、この正常圧水頭症であれば、外科手術などを行うことで、劇的に症状を改善することもできるようです。

正常圧水頭症には以下のような症状や特徴があります。

歩行障害

パーキンソン症状に似た、身体全身のこわばりがあらわれたり、足の運びが小刻みになり、1人で歩くことが困難になったりします。家の中など、短距離を歩行するときでも、歩行の際、ちょっとしたことで体のバランスを崩し、転倒しやすくなります。

言語障害

上手く言葉が出てこなくなったり、返答までに時間がかかるようになります。また、相手の言葉を上手く理解でき無くなり、見当違いの返答が多くなったりする場合もあります。症状が進むと、会話が上手くできないことにストレスを感じ、話の途中で突然怒りだしたりすることもあります。

失禁

排尿や排便が間に合わなくなったり、失禁が多くなったりします。症状がひどくなると、夜間、トイレに行かなくなり、朝になって、家族が失禁していることに気が付くようになったりもします。

40代や50代の若年でも認知症になる可能性が・・・

認知症と聞くと、80歳代や90歳代といった高齢者の方が発症する病気だと思うでしょうが、40歳代や50歳代の働き盛り世代である若年層でも発症することがあり、これを「若年性認知症」と言います。

18歳から64歳の間に発症する認知症を対象としていて、平成21年に厚生労働省からの発表によると、18歳から64歳の10万人当たりの若年性認知症の有病率が、10代で1.6人、20代で21.4人、30代では29.人、30代で29.5人、40代で83.9人、50代では332.7人という推計も出ていて、10代という若さで発症したケースもあるようです。

40歳や50歳と言えば、社会の中心となる働き盛りの世代ですが、この若さでなぜ認知症を発症してしまうのか?その原因や、発症後の症状、予防方法などについて解説してみようと思います。

若年性認知症を発症する原因とは?

若年性認知症を発症する原因には様々なものがあり、平成21年に厚生労働省からは以下のようなデータが発表されています。


【「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」の調査結果の概要】より引用

発症する原因となる基礎疾患で最も多いのが、脳出血や脳梗塞が原因となり発症する脳血管性認知症が最も多く、原因疾患として次に多いのが、アルツハイマー型認知症です。その他には、アルコール性認知症やレビー小体型認知症などがあげられています。

それでは発症の原因について、原因疾患の中から上位2つである、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症、そして、若年層には馴染みが深い、アルコールにかかわる、アルコール性認知症について解説します。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血が原因となって起こります。脳出血の場合には、脳の血管が破れることで血管内の血液が脳内に溢れ、脳内に溢れた血液が脳細胞を圧迫したり脳細胞を破壊することで、物忘れの症状や運動機能障害などが起こります。

症状が改善に向かっても、身体のマヒや言語障害などが残る場合もあり、以前のように体が動かないことへの失望感や孤独感が底される場合もあるようです。その他にも、記憶障害や注意力の低下なども起こる場合があるようです。

アルツハイマー型認知症

発症の原因については様々なことが言われていて、原因のすべてが解明されていません。

現在、原因として最も多く言われているのが、脳にβアミロイドという脳の老廃物(別名、脳のゴミ)一定量に達することで、次にタウというたんぱく質が脳内に溜まり、脳の神経細胞を破壊します。そして、この物質が脳内に蓄積されると、アルツハイマー型認知症を発症する原因とも考えられています。

また、遺伝が原因となって発症する場合もあり、の遺伝が原因となる発症率は、発症率全体の約1%と言われていますが、65歳未満の比較的若い方に発症するというデータもあるようです。

発症後、意欲の低下や、うつ状態などがあらわれるようです。また、抑うつ状態が原因となって仕事の効率が下がったり、他者とのコミュニケーション能力が低下する場合もあるようです。このような症状があらわれても、症状を改善しようとする意欲自体が消失してしまう場合もあり、突然仕事ができなくなったり、日常生活に支障をきたしてしまうケースもみられるようです。

アルコール性認知症

アルコール性認知症は、アルコールの過剰摂取が原因となって発症する認知症です。アルコールを長期間、多量に摂取することによって起こる脳梗塞や脳血管障害や、ビタミンB1欠乏による栄養障害が発症の原因と言われています。また、この認知症は、高齢者だけではなく、若年層でも発症する可能性があるといわれています。

発症後の主な症状としては、歩行が不安定になったり、意欲の低下が見られたり、人によっては暴力的になったり幻覚を訴える場合もあるようです。

この他にも、行動に抑制が効かなくなって、「欲しい」という感情を抑えることができなくなると、ものを盗んでしまったり、買い物に行ったときなどに、自分の所持金の計算もできないほど買い物をしてしまうなど、生活に支障をきたす場合もあるようです。

若年性認知症の予防方法は?

若年性認知症を発症する原因には、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症、アルコール性認知症、その他には、交通事故やケガなどで頭部を強打したことによる頭部外傷性後遺症などがありますが、生活習慣も発症の原因として多くかかわっているとも言われています。

実際に発症後、生活習慣を変えたことで症状に改善が見られたケースもあるようです。では、ここからは日々の生活のおいて、どのようなことに注意をすればよいのかご紹介してみようと思います。

塩分の摂りすぎに注意する

塩分の摂りすぎは高血圧の原因となり、高血圧は脳血管性認知症を発症する原因ともなります。日頃から塩分を控えめな食事を心がけることが高血圧の予防ともなり、高血圧を予防することが、若年性認知症の原因ともなる、脳血管性認知症の予防にもなります。

野菜を常日頃から多く摂る

緑黄色野菜に含まれるミネラルやビタミンは脳の活性化には不可欠と言われています。また果物にもこれらミネラルやビタミンが多く含まれていると言われています。日々の食生活の中で、野菜や果物の摂取を習慣化することも、若年性認知症の予防にも大切です。

動物性脂肪の摂りすぎには注意する

牛肉や豚肉、バターなどに多く含まれている動物性脂肪の摂りすぎは、高血圧や動脈硬化の原因ともなりますし、脳血管障害を誘発する要因ともなります。

脳血管障害は脳血管性認知症の原因ともなりますので、肉や脂っこい食事を好む方は注意が必要です。また、鶏卵や魚卵などに含まれるコレステロールも血管の疾患を発症する原因とも言われています。

青魚を多く摂る

イワシなどの青魚に含まれているドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)には、血流を改善する効果があると言われていて、脳血管障害を発症する原因ともなる、動脈硬化や高血圧、脳梗塞の予防に効果があると言われています。

有酸素運動を行う

有酸素運動が認知症の予防に効果があることは、昨今、多く取り上げられています。

ウォーキングや軽めのジョギング、無理の無い範囲で行う筋肉トレーニングなどを定期的に行うことで、脳に刺激を与えることとなり、認知症予防に効果があるとも言われています。

認知症予防に効果がある、運動方法について解説した記事を下記に記します。

※認知所予防に筋肉トレーニングが効果あり!
※認知症予防に効果がある!ウォーキングの秘密とは?

タバコの吸いすぎには注意!

1日10本から40本のタバコを吸う喫煙者では、認知症を発症する確率が1.4倍、1日40本以上のタバコを吸う喫煙者では2.1倍に達するというデータがあるそうです。いつまでも元気に日々暮らすためにも、認知症の予防のためにも、タバコの吸いすぎには注意が必要です。

お酒の飲みすぎには注意!

アルコールの過剰摂取はアルコール性認知症の発症原因である、脳の萎縮を招く原因ともなります。1週間の間に休肝日を設けたり、1日の飲酒量に気を使うなど、飲みすぎには注意が必要です。

認知症の代表的な病気はこの3つです。

ここまで、認知症を発症する原因や、原因となる代表的な病気、認知症と間違えやすい病気などについて解説してきましたが、ここでは、認知症の中でも代表的な病気である、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症について解説しようと思います。

アルツハイマー型認知症

認知症を発症された方の約6割がこのアルツハイマー型認知症を発症されると言われています。認知症を発症する中で、最も患者数が多いと言われているのもこのアルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症の代表的な症状は、発症した初期から記銘力(新しい情報を覚える能力)の低下がみられることと、物忘れの症状が強く出ることです。また、遺伝が原因となって発症することがあるのも、このアルツハイマー型認知症の特徴でもあります。

※アルツハイマー型認知症の特徴や発症の原因、予防方法などについて解説した記事がありますので参考までに下記に記します。

認知症で発症者数が多い上位TOP3を徹底解説!

脳血管性認知症

アルツハイマー型に次いで患者数が多いと言われているのが、脳血管性認知症です。この認知症は、脳血管性認知症では、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳血管の病気が原因となって発症すると言われています。

また、認知症の特徴でもあるのが、女性よりも男性に多く発症するといったデータもあるようで、物忘れや身体機能の低下といった症状が強く現れるのも、この認知症の特徴でもあります。

※脳血管性認知症の特徴や発症の原因、予防方法などについて解説した記事がありますので参考までに下記に記します。

認知症で発症者数が多い上位TOP3を徹底解説!

レビー小体型認知症

脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症と共に、三大認知症と言われているのが、レビー小体型認知症で、身体全身にある、レビー小体というたんぱく質が脳内に溜まり、脳の神経細胞を破壊することで発症します。

この認知症の代表的な症状が、パーキンソン病に似た症状である、手の震えや歩行が小刻みになったり、全身のこわばりによって、歩いているときに、左右の手の振りが無く、棒のように歩くなどの症状が現われます。

また、顔の表情が無表情になり、喜怒哀楽が乏しくなるのも、この認知症の特徴でもあります。

※レビー小体型認知症の特徴や発症の原因、予防方法などについて解説した記事がありますので参考までに下記に記します。

認知症で発症者数が多い上位TOP3を徹底解説!

認知症の専門医も使っている認知症テストがこれ!

では最後に、認知症の疑いや、認知機能の低下を早期発見するために、医療現場や認知症専門医、介護の現場で多く使われている簡単なテストの内容をご紹介します。

このテストは、1974年に精神科医である長谷川和夫氏が開発した簡易知能検査で、「長谷川式認知症スケール」と呼ばれています。1991年に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として質問項目と採点基準等の改訂がされました。

「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」は、9つの評価項目から構成されていて、それぞれの項目に見当識や記憶、計算など認知機能を評価するために重要な要素が含まれています。

※改訂長谷川式簡易知能評価スケールではこのようなテストを行います。

改訂長谷川式簡易知能評価スケールの特徴

改訂長谷川式簡易知能評価スケールには、次のような特徴があります。

⒈自宅でも簡単に、約5から10分という短時間でテストができる。

⒉認知症のスクリーニングテストとして日本では主流である。

⒊20点以下/30点満点で認知症の疑いが発見できる。

⒋多くの医療機関で使われていて、テストの妥当性が高いと言われている。

⒌テストで用意する物品が、家にある日用物品だけ簡単に準備できる。

では早速、認知症のテストをしてみましょう!

では、実際に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」で認知症のテストを行ってみましょう。テストの前にまずいくつか準備をしてもらいます。準備に必要なものは以下3つになります。

⒈「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の評価用紙

※評価用紙はこのようなものです。

⒉筆記用具(鉛筆と消しゴム)
※いつも使っているもので構いません。

⒊5つの道具(ハサミ、時計、鉛筆、鍵、硬貨、くし、スプーンなど)
※絶対にこの5つである必要はありません。家の中にあるもので5つ用意できれば大丈夫です。

テストは評価用紙に書かれている9つの質問に回答してください。回答例を以下に記しますので参考にしてみてください。

(1) 年齢

【問い】「年齢はいくつですか?」と質問する

【点数】1点 or 0点:本人の年齢が答えられたら正解で1点。不正解は0点。

(2) 日付の見当識

【問い】①今日は何年ですか ②何月ですか ③何日ですか ④何曜日ですか

【点数】① 1点 or 0点:年が答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】② 1点 or 0点:月が答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】③ 1点 or 0点:日にちが答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】④ 1点 or 0点:曜日が答えられたら正解で1点、不正解は0点

このような9つのテスト内容を行った結果、30点満点中、20点以下の結果が出た場合に認知症の疑いがあると言われています。また「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の評価方法について、詳しく解説している文献を以下にご紹介します。

※「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)の使い方

まとめ

認知症と聞いたとき、多くの方は、「物忘れがひどくなる」「何度も同じことを聞かれるようになる」「徘徊が始まる」など答えるのではないでしょうか。また発症の原因を聞かれたら、「歳をとって、脳が委縮するから?」などと答える方も多いと思います。

ですが、認知症という病気では、「物忘れ」「徘徊」「何度も同じことを聞く」などの代表的な症状以外にも、歩行などに障害が出ることもあったり、症状が認知症によく似ているが、うつ病に似た症状が出る「老人性うつ病」という高齢者特有の病気もあります。また、高齢者さんだけではなく、40歳、50歳、という働き盛りの世代が発症する、若年性認知症という病気もあります。

発症の原因にも、誰もが多く知っている、「脳の容積が減っていく」「脳の萎縮」以外にも様々な原因があり、日々の食生活が大きく影響するものから、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、喫煙やアルコール、ストレスが原因となるものまで、様々なものがあります。

また、巻頭でご紹介した、「認知症チェック」では、認知症の疑いがあるのか、すでに認知症の初期症状が始まっているのかを知る目安となるものですし、巻末で解説している「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」では、5分から10分程度の簡単なテストを行うだけで、認知症を発症しているのか、それともまだ様子を見てよい状態なのかが、点数で示されるものです。こういった、簡易テストを利用していただくことで、認知症を早期発見するためにもぜひ役立てていただきたいと思います。

今回ここまでお伝えしてきた内容が、まだ、認知症について理解が浅い方や、認知症について、これから理解を深めたいと思っている方、認知症について疑問に思うことが多々あって、困っている方々にとって、少しでもお役に立てることができれば幸いです。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。

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