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022 認知症のひどいもの忘れへの対応方法を徹底解説します!

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まえがき

認知症の代表的な症状と聞いた時、多くの方が、「ひどいもの忘れ」の症状を思い浮かべるのではないでしょうか。

家族の名前を忘れてしまったり、カレンダーの日付がわからなくなったり、食べたばかりなのに、「食事を食べてない」などと何度もしつこく訴えてきたり・・・。このような、もの忘れの症状に日々対応する、介護者さんやご家族のストレスは並大抵ではありません。

では、なぜ、認知症のもの忘れに対応する介護者さんやご家族は、これほどのストレスを感じるのでしょうか。それは、もの忘れの症状を発症しているときの、ご高齢者の心理状態やストレスの原因があるのです。

誰でも、60歳を過ぎたころから、記憶力や判断力などに衰えがみられるようになり、脳も緩やかに老化を始めます。そして、このような、脳の老化が始まることによって、「年相応のもの忘れ」が見られるようになります。

昨日のことが思い出せなくなったり、近所の友人の名前がなかなか口に出せなくなったり・・・。このような「年相応のもの忘れ」では、本人に「自分は何かを忘れている」という自覚があります。しかし、認知症のもの忘れでは、本人に「忘れている」という自覚がないので、何かが無くなった原因が、「自分がどこかにしまい忘れた」とは考えず、家族や介護者さんに向かって、「誰か(他者)が盗んだ」などと言って、近くにいる家族や介護者を追い掛け回すなどの行動に出るのです。

これが、もの忘れの症状に対応する多くの介護者さんや、日々お世話をするご家族が、大きなストレスを感じる原因です。

このように、認知症のもの忘れでは、発症された御本人に「自分が何かを忘れている」という自覚が無いために、何度も同じことを尋ねてきたり、忘れてしまった出来事を、あたかも、介護者さんやご家族に原因があるかのように訴えてきたりします。そして、このようなことが続くと、対応する介護者さんはとても大きなストレスを抱えることとなります。

そこで今回は、こういった、認知症のもの忘れのでざまざまな症状に対して、介護される方たちがどうすれば、ストレスを軽減することができるのか、どのような対応をすればストレスや負担を軽減することができるのか、事例なども交えながら解説していこうと思います。

認知症もの忘れ|日にち・人や家族の名前・自分の年齢を忘れる

今日の日付を忘れて、何度も何度も家族に確認してきたり、毎日一緒に暮らしている家族の名前を忘れてしまったり、このようなもの忘れの症状は、認知症を発症し、ある程度症状が進行したご高齢者さんに多くあらわれる症状で、中度から重度の認知症高齢者さんに多く見られる、見当識障害という症状です。
※見当識障害とはこんな症状です。
「引用元:看護のお仕事 ハテナース」

一緒に暮らしているご家族や、離れて暮らしている、お父様やお母様から、面と向かって「あなた、誰でしたっけ?」「・・・えっと、あなたのお名前は・・・」などと言われたら誰でもショックだと思います。

また、毎日毎日、今日の日付を尋ねられたり、自分の年齢を平気で間違えたりなど、対応するご家族や介護者さんにとって、肉体的にも精神的にも、とても大きな負担となります。

このような、もの忘れの症状に対応する際に、大きな負担となる、ストレスや精神的疲労などを少しでも少なく対応するにはどうすればよいのか、また、かえって、逆効果になってしまう対応方法などについても解説してみようと思います。

もの忘れで日にち・人や家族の名前・年齢などを忘れた時の対応

先ほど、見当識障害という言葉をお伝えしました。

この、見当識障害は、今日の日付や時間などを認識したり、判断したりする見当識という能力が衰えるとあらわれる、認知症発症の初期に多く見られる症状の1つです。

このような、見当識障害によるもの忘れがあらわれた時には、「何度も何度も同じことを聞いてきて」などとつい言ってしまうかもしれませんが、イライラする気持ちを一旦抑えてください。そのうえでまず、相手の言葉を聞いてあげることがとても大事です。

年相応のもの忘れの場合には、忘れていることや、間違っていることを伝えれば、ご本人に忘れていることや間違っていることへの認識があるので、注意してあげても相手に理解してもらうことができます。ですが、見当識が衰えた、認知症高齢者さんに、間違っていることや忘れていることを伝えても、ご本人に忘れていることを自覚してもらえません。

見当識障害という症状が、自分の置かれている状況を判断したり、認識できなくしていますから、自分が何を注意されているのか理解できず、逆に相手を混乱させることにもなります。まず、相手を混乱させないように、できるだけ穏やかな声で、ゆっくりと相手の言い分を聞いてあげることが、その場の事態を静かに収拾させる最も近道でもあります。

日にち・人や家族の名前・年齢などを忘れた時のNGな対応

認知症によるもの忘れの症状に対して、注意したり叱ったりすることは絶対にしてはいけません。

忘れてしまうことも、理解できないことも、本人が自ら望んで行っているわけではなく、認知症を発症したことによっておこる、見当識障害という症状が引き起こしているからなのです。

そして、本人は、見当識障害であることを自覚・認識できません。ですから、本人を否定することや、注意することは、状況を理解できていない本人を逆に混乱させるだけです。

何度も何度も同じことを聞かれたりすれば、そばにいるご家族や介護者さんもイライラしたり混乱したりするかもしれませんが、相手の症状は、認知症という病気が引き起こしていること。そして、自分でもなぜ、思い出せないのか、なぜ忘れてしまうのか、理解できずに困っていること。このことを理解し、受け止めてあげることがとても大切です。ですから、認知症による、見当識障害がある人を注意したり、叱ったりすることは絶対にNGなのです。

認知症もの忘れ|人との約束を忘れる・病院への通院日を忘れる

ご高齢者さんだけでなく、私たちでも、人との約束事や、病院への通院日などをつい、うっかり忘れてしまう。そんなことは決して珍しいことではありません。

通院する日を勘違いしていることに気が付かず、いつも飲んでいる内服薬の袋を開けてみたら、もう、薬が残っていなかった・・・。そこではじめて、通院日を忘れていたことに気が付いた。
そんな経験、誰でも一度ぐらいはあるのではないでしょうか。

また、ご近所さんと、新しくできたスーパーに買い物に行く約束をしていたのに、約束の時間についうっかり別の用事で出かけてしまった・・・。こんなことがあると私たちは、次回に同じことを繰り返さないように、予定をカレンダーに書き込んでおいたり、常に目に止まる場所にメモを残しておくなど、忘れないように工夫をしますが、認知症を発症して、もの忘れの症状が始まっているご高齢者さんには、自分が「忘れている」という自覚がありません。

それ以前に、「なぜ、忘れてしまったのか?」「なんで覚えてられないのか?」と、予定を覚えていられない自分をどうすればよいのかわからず、自分に自信を失って、外に出ることを控えるようになる人もいます。

ですが、通院や買い物などは、外に出る機会の少ないご高齢者にとって、貴重な外出の機会です。そして、ご近所さんや友人との外出は、日々の生活を活性化することにもつながります。

予定や約束を忘れてしまうご高齢者さんをうまくサポートし、いつまでも外出の機会や楽しみを持って生活してもらうための、適切な対応方法について解説してみようと思います。

もの忘れで人との約束を忘れる・病院の通院日を忘れる時の対応

付き合いの長いご近所さんとのお出かけの約束を忘れていた。

先月からもう、日にちも決まっていた通院日をすっかり忘れていた。

最近では、こんなことが当たり前になっているので、大事な用事は、事前に何度も口頭で伝えたり、メモ書きにして渡したりと、忘れないように工夫はしているのに・・・。

しかし、ここまでしても、認知症を発症したご高齢者さんは何度も同じようなことを忘れてしまうのは、なぜだと思いますか?

忘れるたびに、次回は忘れないように、周りにいる人間が伝えても、次には忘れている。それは、前回忘れたことすら忘れてしまっているからです。本人に、「忘れた」という自覚が無いのですから、いくら周りが騒いでも本人にはまるで通じないのがあたりまえです。

では、このようなもの忘れにはどのように対応するか、例えば、大事な用事があることをご家族が把握しているのであれば、出かける日の朝、食事の時にでも構わないので、いつも食事をとるテーブルの上にさりげなく、メモ書きを置いておく。または、一緒にカレンダーに予定を書き込んでおいて、できるだけ毎日ご家族や介護者さんが一緒にカレンダーを見る習慣をつける。

もの忘れが始まったばかりの、認知症の初期であれば、メモ書きやカレンダーを一緒に確認する対応方法はかなりの効果が期待できます。

そして、ここで大事なことは、本人に「忘れないようにする」のではなく「忘れても大丈夫」という安心感を与えることが大事です。

本人は、なぜ忘れてしまうのか、その理由がわかりませんから、本人に理解できないことを必死になって理解させようとしても、これはかえって逆効果です。それなら、「どうせ忘れるんだから」ぐらいの気軽な気持ちで対応したほうが、対応する側も、される側もストレスを最小限に抑えることもできます。

人との約束を忘れる・通院などを忘れた時のNGな対応方法

日時がすでに決まっている、人との約束事や、病院に通う日などは、できるだけメモなどにして、御本人が日常的に目につく場所に置いておくとよいのですが、ここで1つ注意してほしいのが、メモを置く場所は、できるだけ少なく、1か所か2か所にしておいてください。

ご家庭によっては、御本人の部屋の壁や、枕元などに、何枚も予定を書いた紙やメモを置いておく方もいるようですがこれは、メモを読んだ本人が、いったいどれが必要なもので、何を伝えるためのメモなのか、混乱する場合もあります。

伝える方法は、できるだけシンプルに、本人にわかりやすくすることが大事です。

また、伝えるときには、何度も何度も同じことを聞かれるので、つい、強い口調になってしまうかもしれませんが、話す時には相手に圧力を与えないように、目線は相手よりも下にして、ゆっくりと言葉を伝えるようにしてあげることも大事です。

同じことを何度も言ったり、同じものを何度も探しまわったり・・・。初めの数回なら付き合えても、回数が重なると周囲の方もうんざりしてしまい、その反動から、ついつい叱ったり、いやな顔をしてしまいがちです。

そして、熱心さのあまり、何とかして記憶を戻させようと訓練のようなことを始められるご家族もいらっしゃいますが、訓練のようなことが上手くできればよいですが、うまくいかなかったとき、ご本人に、できない体験がたくさん積み重なると、自信を失いますし、辛い思いばかりが後に残りますので、このような対応はお勧めできません。

認知症もの忘れ|持ちものを無くす・どこにしまったか忘れる

朝の忙しい時間、出かける間際になって、いつもあるはずの場所に、財布やメガネ、鍵などが見つからない。

いつもあるはずの場所に、探しているものが見つからない。

こんな時には誰でも、「ねぇ、財布見なかった?」「ここに置いておいた鍵知らない?」などと、近くにいる人を捕まえて、時間を気にしながら慌てふためく。こんな経験誰でもあると思います。

また、こんな時、本人は焦って慌てていても、近くにいる人は意外と冷静にその様子を見ているもので、近くにいた家族などに尋ねてみたら、「知るわけないでしょう」とか「きちんとしまっていないから悪い」などと、逆に叱られてしまったことなどもあると思います。

このようなことを、認知症を発症していない私たちが言われても、「次は注意しよう」とか「慌てないように、前もって準備しておこう」と、自分を戒めると思いますが、これが、もの忘れが進んだご高齢者さんの場合、探し物が見つからないことを、自分の責任とせずに周りにいる人間に責任転嫁したりします。

始めは「あれが無くなった」「あれが見つからない」ぐらいで済みますが、なかなか探し物が見つからず、イライラから興奮状態が進むと「誰かが隠した!」「誰かが盗んだ!」となる場合もあります。

認知症を発症した人にとって、混乱したり興奮した状態は、症状を悪化させる原因ともなります。

このように、認知症を発症されたご高齢者さんが、自分で持ち物をどこにしまったわからなくなってしまったとき、または、自分でしまったものを探しだせなくなったとき、ご本人が、混乱したり、興奮したりすることなく対応するためにはどうすればよいのか解説してみようと思います。

自分の持ちものを無くした・どこにしまったか忘れた時の対応

誰でも、自分が何かミスしたことを指摘されるのは、気分が良いものではありません。これは、認知症のご高齢者さんでも同じです。

しかも、認知症のご高齢者さんは、自分が何かを忘れているという自覚がないのに、「また、同じことを言って」「さっきも教えました」など、まるで自分が何かを忘れてしまって、周りに迷惑をかけているかのように感じているのですから。

このようなとき、一番大事なのは、探したいものが見つからずに、迷い混乱し、困っている認知症のご高齢者の気持ちを安心させてあげることです。そして、「何処にしまったの」「また無くしたの?」などと注意するような口調で問い詰めないでください。

問い詰めたところで、本人は自分が無くしたとは思っていません。それはなぜか?認知症のご高齢者さんは、自分で無くした。もしくは、どこかにしまった。このような記憶をすっかり無くしてしまっているからなのです。

やはり、最も良い対応方法は、手間がかかるかもしれませんが、やはり、「一緒に探す」これにつきます。

そして、探しているものが見つかった時には、「こんなところから見つかった」や「どうしてこんなところにしまったの?」などと、本人を問い詰めるようなことはさけてください。さりげなく「見つかってよかったですね」と、これぐらいにしておいてあげてください。

持ちものを無くした・どこにしまったか忘れた時のNGな対応

先ほどもお伝えしましたが、一番のNGは、しまい忘れたことを本人に問い詰めることです。

これは、何度もお伝えしていますが、認知症を発症し、もの忘れの症状が進んだご高齢者は、自分で何かを忘れたという出来事自体を「忘れています」

自分で何かをしまい忘れた、何かを無くした、などと聞いたところで、本人にその自覚が無いのですから、全く無駄であるばかりか、人によっては怒り出す場合もあり、かえって逆効果になる場合もあります。

対応として正解なのは、やはり、本人の自尊心を傷つけず、さりげなく見つけて上げること。そのためには、本人に事実を確認したり問い詰めたりはNGです。

認知症もの忘れ|何をしようとしていたのか瞬間で忘れてしまう

買い物などに出かけた時、何かを必要なものを買うつもりでお店に行ったはずなのに、お店に入ってみたら、「あれ?今日、何を買おうとしたんだっけ・・・」なんてこと、誰にでも一度ぐらいはあるのではないでしょうか。

こんな時、私たちであれば、しばらく時間をおけば思い出すことができたり、思い出せなくても、そのまま買い物を続け、後日思い出したときにあらためて買いに行く。このように、特に慌てたりすることもなく、対応できると思います。

ですが、認知症を発症されたご高齢者さんには、自分で何かを忘れてしまったという自覚が無いために、買い物に出かけお店まで入ったのに、何を買うためにお店に来たのかすっかり忘れていることがあります。しかも、このような状況になった時、自分が何をしようとしたのか思い出せず、なぜ、忘れてしまったのかも理解できません。ですから、近くにいる家族や介護者さんを捕まえては、自分が今何をしようとしていたのか、なんで忘れてしまったのかを、何度も何度も確かめようとします。そして、このような状態が続くと、中には、混乱状態になったり、パニック状態になってしまう人もいます。

また、混乱したり、パニックを起こすことは認知症を発症しているご高齢者にとって、老人性パニック障害という病気を発症する原因となる場合もあります。

このパニック障害という病気は、精神的混が生じることで、主に自立神経に関する症状を引き起こし、突然のめまいや痙攣、時には呼吸困難を起こすなど、命にかかわるような重篤な症状を
引き起こす場合もあります。

※パニック障害とは?
「引用元:神奈川県ホームページ」

このように、ご高齢者さんが、つい、うっかり「何かを忘れてしまった」「何をしようとしていたのか思い出せない」などの、もの忘れの症状が見られたとき、忘れてしまっているご本人を混乱させたり、パニックになるらないためにはどのように対応すればよいのか、また、逆効果になってしまう対応方法などについても解説してみようと思います。

何をしようとしていたのか瞬間で忘れてしまった時の対応方法

「今、何をしようとしていたんだっけ・・・」「何かを思い出せない・・・」

認知症を発症すると、このような、ついさっきの出来事をすっかりと忘れてしまう、もの忘れの症状が多くなります。これは、認知症の症状の1つである、記憶障害という障害が原因です。

※記憶障害とは
「引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

認知症によっておこる記憶障害では、数分前に自分が見たものや聞いたもの、自分の行動などが思い出せなくなります。さらに症状が進行すると、昨日、もしくは以前に覚えていたはずの出来事なども忘れてしまうようになります。

このような症状が見られたとき、「さっき、お茶を飲もうとしていたでしよう」「さっき散歩に行ってきて、今帰ってきたところでしょう」などと、本人が忘れてしまった出来事を教えてあげることは、かえって逆効果になります。

では、忘れてしまったことを伝えてあげるのがなぜダメなのか、それは、本人に「先ほどの出来事を忘れてしまった」という自覚が無いので、自分の記憶にない出来事を言われても、本人は全く覚えていないので、それを理解することができません。自分の記憶にないことを伝えられることで、逆に混乱する人もいます。

このような時には、忘れてしまっても「大丈夫です。後でゆっくりと思い出してください」と、忘れてしまっても大丈夫であることを伝え、相手を安心させることの方が大事です。そして、時間をかけて思い出すという作業をしているうちに、これはもの忘れを逆に利用する方法ですが、先ほどの家族との会話なども忘れてしまいますから、まずは、相手をいかに落ち着かせるかが大事になります。

ご本人が、今、何をしようとしたのか忘れた時のNGな対応方法

先ほどもお伝えしましたが、認知症のもの忘れでは、「自分が何かを忘れてしまった」という自覚が無いので、ご高齢者が忘れてしまっている出来事などを、身近にいる家族や介護者が、親切心から教えてあげても本人には「なぜ、そんなことを言われているの?」と疑問に思うだけです。

これも先ほどお伝えしたことですが、本人に自覚がないことを、無理に思い出させようとすると、パニックを引き起こす原因ともなり、命に係わる重篤な事態を引き起こす場合もあります。ですから、忘れてしまったことを無理に思い出させるのことはNGです。忘れてしまったことは、いずれ思い出してくれたらよい、ぐらいに思った方が良いのです。

認知症もの忘れ|火を消し忘れる・水を出しっぱなしにする

認知症を発症したご高齢者のかかわる事故の中で、数多く発生しているもののなかに、火の消し忘れによる火災事故があります。

特に、ご家族と同居されているご高齢者さんは、普段は同居されているご家族が、食事のお世話などをされているケースが多くみられますが、ご家族が外出中、留守番などをしているときなどに、「家族のために食事を用意してあげよう」と鍋に火をかけてみたものの、途中で別の何かに気を取られ、しかも、鍋に火をかけていることも忘れてしまった。

または、調理をしようとして、鍋に火をかけたことを忘れて、外に買い物に出かけてしまい、危うく火事になるところだった。もしくは、鍋を焦がしてしまい、火事になる寸前で帰宅してきた家族が発見した。このような、認知症高齢者さんがかかわる火災事故が、数多く発生しています。

さらに、お風呂の湯船に水を溜めようとして、水を出していたことを忘れてしまい、脱衣所まで水が溢れかえってしまった。このような、水や火を扱っていることを、うっかり忘れてしまったことによる事故も数多くみられます。

鍋を焦がした。床が水で濡れたくらいで済めばよいですが、火災事故などでは、ご本人にも危険が及びますし、近隣の住宅へ被害が及ぶことも考えられます。

このような、悲惨な事故になる前に、普段からどのような備えをしておけばよいのか、どのような対応をしておけばよいのか、これから解説してみようと思います。

火を消し忘れた・水を出しっぱなしで忘れたときの対応方法

認知症を発症したご高齢者さんは、ついさっきの出来事を覚えておくことがとても苦手です。

例えば、台所で何か料理を作っていて、ガス台の鍋に火をかけていた。鍋が煮立つのを眺めているときに電話が鳴ったので、いったんその場を離れた・・・。

私たちであれば、その場を離れる際に、まずガス台のガスを切ってからその場を離れるか、電話に出ても、長くなりそうだったら、いったん電話を切って、もう台所のガス台に戻って、再度火を確認すると思います。

ですが、認知症を発症されたご高齢者さんは、電話口に出たら、もうその瞬間に、さっきまで台所でおこなっていた調理の記憶は消えてしまいます。ですから、ガス台に火がかかっていようが、水道から水が出っぱなしになっていようが、覚えていません。

しかし、火の消し忘れがあるからと言って、家じゅうのガス器具を全て撤去できるご家庭もなかなかないと思います。そのような場合には、少しお金はかかってしまいますが、ガス器具をIH調理器具(電磁調理器具)などに交換するなど、ご本人が触って大丈夫なように、触られることを前提に対策をおこなうことが大事です。また、ガス器具の中にも、センサーなどで自動消火装置が付いているものもありますので、大手の電化製品店で相談してみてもよいでしょう。

また水回りに関しては、浴槽であれば、水位をセンサーが感知して、浴槽のある一定の水位になったら自動で水道が止まるものもありますし、台所の水道栓も、ある一定時間、水が出っぱなしになっていると、自動で水道栓が止まるものなどもありますので、大手電化製品店などで相談してみてもよいでしょう。

火を消し忘れる・水を出しっぱなしにする時のNGな対応方法

同居されているご高齢者さんが、過去に1度でも、火の消し忘れや水を出しっぱなしにしたことがあるのなら、まず、絶対に1人で留守番をさせてはいけません。なぜなら、ご高齢者さんが関わる、火の消し忘れなどの事故が発生した要因の多くに、1人で留守番をさせている間の火災事故が多く挙げられているからです。

水の出しっぱなしに関しても同様で、やはり、1人で留守番をさせている間に起こる事故が多いようで、やはり、ご家族や介護者さんの見守りがない状況で、留守番をさせることは避けた方が良いでしょう。

どうしても留守番をさせなければいけない状況になったなら、ホームヘルパーなどの介護サービスなどを利用して、調理や家事、見守りもしてもらう。もしくは、日中、家族が不在になることが多いのであれば、デイサービスなどの介護サービスを利用して、介護施設で日中お世話をお願いするなども検討したほうが良いかもしれません。

※ホームヘルパーとはこんな介護サービスです。

※デイサービスとはこんな介護サービスです。

認知症もの忘れ|家までの道を忘れる・外出したら家に帰れない

認知症の症状の1つに、見当識障害という症状があります。
※見当識障害とは、こんな症状です。

「引用元:看護のお仕事 ハテナース」

自分が今いる場所、今の時間や季節、目の前にいる人物などを正しく認識する能力を見当識(けんとうしき)といいます。この、見当識という能力に障害がおこると、今日の日付や、自分がいる場所などがわからなくなったりします。

ご高齢者が、家の外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る徘徊をするのは、今、自分がいる家を自分の家と認識することができなくなり、他人の家にいると誤って認識してしまう。他人の家から自分の家に帰ろうと思い立って、外に出てみたものの、道がわからずにウロウロする。これも、見当識が原因で起こる、認知症の症状の1つでもあります。

このように、見当識に障害がおこることで、自分の家までの道のりがわからなくなったり、外を歩いているときに、今、自分がいる場所がどこなのかわからくなり、自分の家に戻ることができない。何度もこのようなことが続くと、外出することに不安を感じるようになり、外出を控えるようになってしまいます。

外出の機会が失われてしまうことは、ただでさえ、歩いたり、体を動かす機会の少ないご高齢者にとって、運動不足や筋力低下の原因ともなりますし、外出を避け、家の中に引きこもることは、刺激の少ない日常生活を招き、脳の活性化を妨げる原因ともなります。

見当識が原因となって、外出した際に、道を忘れたり、わからなくなったとき、どのように対応すればよいのか、また、予防するために事前に行っておいた方が良い対応方法などについても解説してみようと思います。

家までの道を忘れる・外出したら家に帰れない時への対応方法

昔から、通いなれた道や場所を忘れてしまう。馴染みの道でも、外に出たら迷ってしまう。

これは、認知症の症状の1つである、見当識障害が原因で起こる、もの忘れの代表的な症状の1つです。

自分にもの忘れの症状があらわれていることへの自覚もなく、忘れてしまっていることや、忘れやすくなっていることへの警戒心などもありませんから、外へ出て道に迷ってしまうことへの備えは、早急に行う必要があります。そこで、まず行うべき備えの1つ目として、ご自宅の近隣にある、地域包括支援センターという場所へ連絡をしてください。

※地域包括支援センターとは?

「引用元:神奈川県厚木市ホームページ」

この地域包括支援センターは、介護保険制度で定められた、地域のお住まいのご高齢者や、その方のお世話をする介護者さんが、介護や医療のことで困ったとき、だれでも無料で相談できる、市区町村が設置している介護の相談窓口です。

電話帳には必ず載っていますし、お近くの役所などに問い合わせれば、電話番号などを教えてくれますので、一度電話で相談してみてください。もし、それでもこのセンターを探すことができなかったら、こちらのホームページから、ご自宅の最寄りの地域包括支援センターを探してみてください。

※このサイトで家の近くの地域包括支援センターを探してみる。

地域包括支援センターでは、道に迷って家に帰れなくなったご高齢者を、地域で見守るためのネットワークを持っていたり、近隣の警察署と連携して、行方不明になったご高齢者さんを捜索するなども行っていますので、ぜひ、一度相談してみてください。

また、民間企業や介護サービスを転回している事業者でも、昨今、道に迷って家に帰れなくなってしまうご高齢者さんのためのサービスをいろいろと展開していますので、ご紹介します。

家の外に出て、道に迷った際に、ご本人がいる位置を教えてくれるツールなどもありますし、テレビなどでもおなじみの、大手警備会社からも、ご高齢者か家に帰れなくなったときに備えるためのサービスやツールを提供していますので、ぜひ参考にしてみてください。

徘徊認知症高齢者の安否確認・生活支援見守りサービス「いまどこちゃん」
「引用元:株式会社 やさしい手」

持病やケガなどが心配な方でも・・・高齢者を見守ります
「引用元:セコムが提供する「持ち歩けるセキュリティ専用端末」ココセコム」

家までの道を忘れる・外出して家に帰れない時のNGな対応方法

外出して道に迷い、1人では家に帰ってこれなくなったとしても、「なんで、いつもの道がわからないの」「危ないから、もう1人では外にでないください」などと、本人を否定したり、高圧的な態度で接することだけは絶対にしないでください。相手を抑え込むような言動はかえって、ご高齢者さんにとってストレスになる場合もあります。

ご高齢者さんにとって、せっかくの運動の機会である、外出のきっかけを奪うことにもなりますし、何より、家に引きこもるようにでもなったら、脳への刺激にとっても悪影響です。また、認知症が進行してくると、外に出さなくすることがかえって、本人にとってストレスとなり、勝手に家を出て行ってしまったりなど、徘徊が始まる原因ともなります。

先ほどもお伝えしたように、ご高齢者さんが家の外に出て、道に迷ったりしたときに備えて、警備会社や民間の介護事業者などから、GPS機能を持った機器や、位置情報を特定できるセンサーなどがサービスとして多々提供されています。

また、家の近所で道に迷った際に、近隣の警察などと連携をとって捜索するなどの、ネットワークなども昨今ではありますので、「家の外で道に迷うから、外に出さない」といった対応はできるだけ避けてあげてください。

もの忘れへの対応についてまとめます

今回はここまで、もの忘れの症状があるご高齢者さんには、どのように対応すればよいのか、どうすれば、介護される方が、ストレスを感じることなく、負担を少しでも減らすことができるのか、適切な対応方法や、NGな対応方法などについて解説してみました。

認知症によるもの忘れへの対応は、とてもストレスがかかりますし、肉体的にも精神的にも負担が大きいものになります。

そして、昨今、認知症高齢者の増加に伴い、介護される方の負担が社会問題ともなっていて、テレビやインターネットなど、メディアでも取り上げられることが多くなっています。

認知症介護は一度始まれば、いつ終わるのか、終わりは見えない長い道のりになることがほとんどです。その、いつ終わるのかわからない、認知症介護を長く続けるためには、いかにストレスを軽減するか、そして、対応する際の負担を軽減するかが大事です。

今回、ここでご紹介した内容が、認知症介護に携わる方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

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