まえがき
昨今、多くの生命保険会社から、「認知症保険」という保険商品が販売されていることをご存知でしょうか?
すでにさまざまな保険会社から販売されていて、テレビやインターネットなどでも目にする機会も多くなっていて、今、注目を浴びている保険商品です。
ではなぜ、今この、認知症保険という保険商品が注目を浴びていると思いますか?
それは今後、人口に占める高齢者の急速な増加と、その中に占める認知症高齢者の増加が予測されているからです。
2015年1月の厚生労働省からの発表によると、日本の認知症の患者数は2012年の時点で、約462万人で、これは65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症であると推計されました。その後も、人口に占める高齢者と認知症高齢者の数は増加する予測となっており、第一次ベビーブームか起きた団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症の患者数は700万人に達すると言われています。これは、65歳以上の高齢者の約5人に1人が占める割合です。
また、認知症高齢者の増加に伴い、最近では、車両事故や道路を逆走する。線路に誤って入り事故にあうなど、認知症を発症された高齢者が関わる事故も多く発生していて、認知症について、テレビやニュースなどで取り上げられることも多くなっています。
このように、認知症高齢者への注目が集まっている中、認知症へのリスクなどに備えるための保険商品である認知症保険が多くの保険会社で販売されていますが、認知症保険と聞いたとき、あなたはどんなイメージを持ちますか?
多くの生命保険会社で販売されている医療保険商品であれば、「病気やケガの時の補償のために加入する保険」と理解できると思いますが、認知症保険は、どんな保証を受けられる保険なのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、認知症保険について
「どんな保険なのか?」
「どんな時に使えばいいのか?」
「どんな保証を受けられるのか?」
などについて、詳しく解説してみようと思います。
認知症保険ってどんな保険?
先ほど、まえがきの章でお話ししましたが、認知症保険と聞いた時、どのような保険であるのか、どのような補償をしてもらえる保険なのか、明確にイメージできる方はまだ少ないのではないでしょうか。
昨今、多くの保険会社から様々な保険商品が販売されていますが、多くのご家庭でも、ご家族の急な病気やケガ、入院、また最近では、がんを発症したときなどに備えて、医療保険やがん保険などの保険商品に加入されていると思います。
保険商品には、病気やケガになった時の治療費や入院費を保障してもらう医療保険や、ご家族がお亡くなりになった時に保証される死亡保険などがありますが、保険に加入するのは、万が一のときに備えて、それぞれの目的に合った保障を担保しておく。これが保険に加入される際の最も大きな理由だと思います。
入院保障であれば、入院した際に大きな金銭的負担となる入院費を退院後に少しでも補填したい。がん保険であれば、健康保険の対象外の高額な治療費が発生した際に治療費を保険で賄って、安心して治療に専念したい。保険を選ぶ際には、このように明確な保障内容に合った保険商品を選ばれると思いますが、今回取り上げている認知症保険とは、どんな保障をしてもらえるのか、どのような場合に備えて加入すべき保険なのか、事例も交えながら解説してみようと思います。
認知症保険に加入しておくべき理由とは・・・
先ほど、まえがきの章でお伝えしましたが、現在、多くの保険会社から相次いで認知症保険関連の商品が販売されています。また、昨今、認知高齢者に関するニュースなどが、テレビやインターネットなどでも多く取り上げられています。
これは、高齢化社会にある、現在の日本で、今後さらに高齢化が進むとともに、認知症高齢者の増加が予測されていることが大きな要因になっていることをお伝えしましたが、では、今後、認知症高齢者が増えていくことと、認知症保険が注目されていることにどのような関連があると思いますか?
認知症高齢者の数は今後も増加の一途をたどります。
認知症のご高齢者に限らず、ご高齢者を家族に持つ方にとって将来への心配事の1つに介護の問題があると思います。
私たちの住んでいる日本では、高齢化が急速に進んでいることは、先ほどもお伝えしましたが平成29年(2017年)10月に内閣府が実施した将来推計では、総人口に占める65歳以上の人口は昭和25年(1950年)では総人口の5パーセントに満たなかったのが、昭和45年(1970年)には7%を越え、その後、平成6年(1994年)には14%を超えました。
高齢者人口はその後も増加を続け、平成29年(2017年)10月には27%(3515万人)を越えました。この将来推計が実施された平成29年(2017年)10月の時点での日本の総人口は1億2,671万人で、総人口の4人に1人が65歳以上のご高齢者であることがわかりました。
それに対して、ご高齢者を支える65歳以下の現役世代の人口は、出生率の減少もあって、65歳以上の人口と65歳以下の人口の比率は、昭和25年(1950年)では1人の65歳以上のご高齢者に対して12.1人の65歳以下の現役世代で支える構図だったのですが、平成27年(2015年)には65歳以上のご高齢者1人を2.3人の65歳以下の現役世代で支える比率となりました。この人口比率は今後、2065年には、65歳以上のご高齢者1人を1.3人の65歳以下の現役世代が支える構図となると予測されています。
そして、65歳以上のご高齢者の人口に占める認知症高齢者の割合についても、平成24年(2012年)では認知症高齢者の数が462万人と、65歳以上のご高齢者の約7人に1人という割合でした。さらに、この数字は2025年には65歳以上のご高齢者の約5人に1人が認知症を発症するとの予測も出ています。
この数字からもわかるように、今後、ご高齢者の人口は増加し、それを支える世代の人口は減少を続けるのに対して、認知症を発症するご高齢者の数は、今後も増加していくことも予測されています。
このように、今後、認知症を発症するご高齢者の人口は増加していくのに対し、その人たちを支える担い手となる世代の人口は減少していくことで、何が問題となっていくでしょうか。
それは、ご高齢者を支えるために必要となっていく介護の問題です。
介護には‟毎月これぐらいの費用”が必要になります。
今後、私たちの暮らす日本は、65歳以上のご高齢者の人口が増えていくが、そのご高齢者を支える担い手となる65歳以下の人口は減っていく。このような内容を先の章でお伝えしました。
この、遠くない未来に、介護が必要となるご高齢者を支える世代が不足することに備えるために、社会全体でご高齢者を支えていくことを目的として、今後さらなる高齢化が進む日本の介護を支える制度として、平成12年(2000年)4月から介護保険制度がスタートしました。
介護保険制度は、加入者が保険料を出し合い、制度を社会全体で支えることを目的とし、ご高齢者が、介護を必要とする状態となっても、必要な介護サービスを利用しながら安心して、住み慣れた家、環境で生活を続けることができるよう支援を行う、国が定めた保険制度です。
この介護保険制度では、ホームヘルパーやデイサービスといった介護サービスを利用することができますが、こういった介護サービスを利用する際には、利用するサービスに応じて自己負担額が発生します。
例えば、お世話をされているご家族がお仕事などで家を留守にする間、ホームヘルパーさんに家に来てもらって食事などのお世話を頼んだ場合に、どれぐらいの費用が発生するのか、参考までにご紹介します。
ホームヘルパーを利用する場合は、1回頼むごとに費用負担が発生します。(費用は1か月分まとめて請求されます)
また、介護を依頼する時間の長さで費用負担額が変わります。
では、次に、これも日中ご家族が留守にされるときなどに利用する方が多い介護サービスである、デイサービスの料金についてご紹介します。
デイサービスも、ホームヘルパーと同じように、1回利用するごとに費用負担が発生します。(費用は1か月まとめて請求されます)デイサービスは、日中(だいたい、午前中の9時過ぎから夕方5時ぐらいまで)介護施設で過ごします。その際に、昼食を食べた時の料金や入浴した際の費用などが介護保険の費用以外に加算されて請求されます。また、利用する時間の長さによっても若干料金が変わります。
例えば、要介護1に認定されている方が、デイサービスを1回(7時間)利用すると、介護保険での負担額が572円。この料金にデイサービスで提供される昼食代金(この金額に関してはデイサービス独自で決定されていて、施設によって変わります)が500円と仮定します。この合計額が、1072円となります。
※デイサービスを利用した際の料金などについて解説している記事をご紹介します。
介護保険の介護サービスを利用すると、利用する1回ごとに費用が発生します(他の介護サービスによっては料金が月額性になっているものもあります)例えば、1週間の間に、デイサービスを3回利用すれば、3000円弱の費用負担が発生し、1か月で計算すると、1万円弱の費用負担が発生します。この他に、ホームヘルパーなどのサービスも利用するとその分の費用も発生しますから、介護サービスを多く利用される方によっては、月に負担する介護サービスの費用が数万円単位になる場合もあります。
ですが、介護は始まればその後、1か月、2か月で終わるものではありません。ですから、1か月にもしも、数万円単位で介護費用の負担が発生し、それがその後、数年単位で続いた場合、これはご家族にとって大きな負担となります。また、自宅での介護が困難となり、老人ホームなどの施設の介護サービスを利用した場合には、さらに高額の介護費用が発生する場合もあります。
参考までに、介護老人福祉施設を利用した際の自己負担額の目安をご紹介します。
なお、介護保険サービスを利用した際の費用負担は、介護保険制度スタートから15年間は原則1割でした。しかし前回の改正平成26年(2014年)で、一定以上の所得のある人は2割負担となりました。また今後、さらに2割負担の人のうち「特に所得の高い層」の負担割合が3割となります。「特に所得の高い層」の具体的な基準はまだ示されていませんが、現時点で想定されているのは、
合計所得金額(給与収入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額)220万円以上の人です。
「引用元:厚生労働省 一定以上所得者の負担割合の見直しについて」
※画像では2割に該当する場合をご説明しています。
※画像では3割に該当する場合をご説明しています。
このように、今後、ご高齢者と暮らすご家族の方の多くが、生活を継続していくために何かしらの介護サービスを利用するとなった時には、利用した分に応じた金銭的な負担が発生します。また、一緒に暮らすご高齢者が認知症を発症された場合には、さらに、認知症の予防や治療などで費用が発生することにもなります。
このような、介護費用や医療費などの負担を補償することを目的とし、昨今、多くの保険会社からさまざまな認知症保険が販売されているのです。
認知症保険はどんな時に使えるの?
ご高齢者が認知症を発症すると、様々な症状が現れます。
自分の家の場所や家までの道のりがわからなくなり、外出先から1人では帰ってこれなくなったり。今まで1人でできていた、トイレや入浴、衣類の着替えなどができなくなったり、食事を1人で食べることができなくなったりなど・・・
さらに、症状が進行すると、昼と夜の違いがわからなくなって、夜中に突然家の外に出たり、最悪の場合、家の外に出て、ふらふらと歩き回るといった徘徊が始まったりなども・・・
ご高齢者が認知症を発症すると、今までは1人でできていた、食事や入浴や、トイレなどが自分ではできなくなったり、突然夜中に起きだしたり、家の外に出たら帰ってこれなくなる。以前は家族が外出する際などは、1人で留守番をさせられるほどだったのが、留守番させようと思っても、水を出しっぱなしにしたり、火を消し忘れるなどを頻繁に起こすようになり、外出することすら難しくなるなど、一緒に暮らしているご家族の負担はとても大きいものとなります。
このように、ご高齢者が認知症を発症するとご家族の負担となる様々な症状が現れますが、認知症保険では、認知症に対して、どのようなことが起きた時に備える保険なのか。ご家族が認知症になったとき、どのようなときに保証を受けられる保険なのか、事例も交えながら解説してみようと思います。
認知症によって医療や介護が必要になったとき
一緒に暮らしているご家族に認知症の症状があらわれたとき、御本人の負担も大きいですが、お世話をされるご家族の負担もとても大きなものとなります。そして、食事のお世話、入浴やトイレの介護など、精神的な負担や肉体的な疲労も大きなものとなりますが、もう1つ、大きな負担となるのが金銭的な負担です。
認知症の治療のための治療費も負担となりますし、在宅で介護をされるのであれば介護保険の介護サービスを利用した際の費用も負担となります。家計経済研究所(東京・千代田)の調べによると、重度の認知症患者の在宅介護費用は年間約110万円で、認知症がない介護(約52万円)に比べて約60万円の負担増になるというデータもあります。認知症保険では、このような経済的な負担をカバーする保証を備えている保険商品が多く販売されています。
では、どのような保険商品が販売されているのか、いくつかご紹介してみます。
介護費用や治療費負担への備えとして
ご高齢者さんが認知症を発症されると、その後の認知症に対する治療費や、在宅で生活を継続するための介護費用への負担が発生します。そのような、介護にかかわる金銭的負担に備えるものとして、朝日生命から販売されている保険商品に「あんしん介護」という保険があります。
この保険では、要介護認定で要支援2以上に認定されると、一時金が支払わられ、要介護1以上に認定されると、その後の保険料の支払いがなくなるという保険商品です。また、まとまった一時金が支払われるだけではなく、介護の負担に備える一生涯年金という支払い方法も選択できるようになっていて、介護の期間が長期に渡る場合に発生する介護費用の負担を軽減することもできます。
※詳しい保険の内容はこちらを参考にしてみてください。
→ 朝日生命:あんしん介護
離れて暮らすご高齢者さんの様子が最近変だと思ったら・・・
ご高齢者さんと離れて暮らすご家族にとって、病気をしていないか、ケガをしていないか、など心配なことは多々あると思いますが、それ以外にも、しばらく会っていない間に認知症を発症していないかなども気がかりなことの1つではないでしょうか。
離れて暮らしているために、様子を見に行けるのは週末ぐらいで、あとは電話で様子を聞いてはいる。だけど、急な体調不調や何かアクシデントがあった時に、すぐには駆けつけることも難しい。近隣に知人も親族もいないので、何かあったあった時に頼める人もいないし・・・
そんなご家族のご心配ごとに対応してくれる認知症保険商品が、第一生命から販売されている「ジャスト」という保険です。
この保険の大きな特徴に、ご高齢者さんの緊急時に、警備会社のALSOK(アルソック)のガードマンがご家族に代わって様子を見に行ってくれるというサービスがあります。
「最近、電話で話していても、どうも様子がおかしい・・・」
「様子を見に行きたいけど、今日は忙しくて行けないし・・・」
そんなとき、警備会社のALSOK(アルソック)のガードマンがご家族に代わって自宅へ行って様子を見に行ってくれます。
このサービスは利用回数に制限があったり、利用するにあたって別途、警備会社のALSOK(アルソック)への申し込みが必要になりますが、1人暮らしのご高齢者さんや、離れて暮らしているご家族へのサポートをしてくれるといった点でご家族の負担軽減につながるサービスでしょう。
認知症でトラブルや事故を起こしたとき
昨今、認知症高齢者さんがかかわる事故やトラブルが多く取り上げられています。
過去、2007年12月、愛知県で要介護4に認定されていた男性高齢者が自宅から外に出て、そのまま家に帰ることなく、近隣の線路に立ち入り、電車にはねられて死亡するという事故が発生しました。この事故では、線路に立ち入った男性の遺族に対して、電車の管理会社であったJR東海が720万円の損害賠償を請求しました。その後、2016年の施行債の結審にて、遺族への責任はないと結審されましたが、一審、二審ではそれぞれ720万円、36万円の支払いを命じる判決が出ていました。
またこれ以外にも、車で道路を逆走し、事故を起こした。スーパーなどの店舗へお金を持たずに入り、商品だけ手にとって店の外に出ようとするなど、判断能力の低下した認知症高齢者さんのトラブルは数多く発生しています。
ですが、トラブルを起こした本人には、トラブルを起こしているという認識も判断もできないために最終的には、先ほどの線路での事故の件でもあるように、本人以外の家族に責任を求められるケースがほとんどです。こういった認知症高齢者さんが起こしてしまったトラブルに対して、最大1000万円まで保障する認知症保険があります。
その保険商品は、リボン少額短期保険株式会社から販売されているリボン認知症保険です。
この保険では、認知症高齢者さんが起こす様々なトラブルに対応できる補償内容となっていて、補償内容をいくつか例としてご紹介します。
例1.水道の水を出しっぱなしにして、階下の家を漏水させてしまった。
→ 保険支払額:200万円
例2.駐車場に停まっていた車に傷をつけてしまった。
→ 保険支払額:20万円
例3.店舗でトラブルになって、陳列してあった商品を壊してしまった。
→ 保険支払額:8万円
このような、認知症高齢者さんが起こす様々なトラブルに対して保証する内容となっているのがこの保険の特徴でもあります。
※この保険の詳しい保障内容に関してはこちらを参考してみてください。
→ リボン少額短期保険株式会社:リボン認知症保険
認知症保険の代表的な保障内容
ここまで、認知症保険について、「どんな保険なのか?」「どんな時に使う保険なのか?」「加入しておく理由とは?」などを解説してきましたが、ここでは、認知症保険で受けられる保障内容について解説してみようと思います。
認知症と診断されたら一時金が保障される
1)医師により初めて軽度認知障害と診断された。
2)医師により初めて認知症と診断された。
3)公的介護保険で要介護状態であると認定された。
このように、医師の診断により、初めて「軽度認知障害」もしくは「認知症」と診断された。または、公的介護保険(国が定めた保険制度である介護保険制度)で、要介護申請の手続きをおこなった結果要介護1以上に認定されたとき、その後の介護費用に備えるために、一時金が支払われる保障です。この保障内容は、多くの認知症保険商品でそなえられています。
「引用元:医療法人泯江堂油山病院 ホームページより」
「引用元:神奈川県ホームページより」
軽度認知障害、もしくは認知症と医師に診断されるためには、認知症の専門医に診断を受ける必要があります。ご自宅の近所に認知症の専門医がいない場合、もしくは見つけることができない場合には、こちらのホームページを参考にして、ご自宅の近所の認知用専門医がいる病院を探してみてください。
「引用元:公益社団法人 認知症の人と家族の会 ホームページ」
また、公的介護保険(介護保険制度)で要介護に認定されるためには、要介護認定申請という手続きをおこなわなければなりません。手続きの方法や申請の手順について解説した記事がありますので参考にしてみてください。
一時金の金額については、各保険商品によって、金額も受け取れる条件もさまざまですが、金額はおおむね、軽度認知障害や要介護状態と認定されると、数十万円から100万円単位まで様々です。また、軽度認知障害と診断され、一時金を受け取った後に、認知症の症状が進行して、再度医師の診断を受けたところ、認知症と診断された場合、再度一時金が受け取れる保証が備わっている保険もあります。
しかし、保険商品によっては、診断された認知症の病名によって、保障の内容と認められない場合もあり、これは多くの保険商品に共通してみられるのですが、器質性認知症と判別される認知症と診断された場合に、一時金の保障対象となる保険商品が多くみられます。器質性の認知症は、脳の萎縮や脳内出血、脳梗塞や脳塞栓といった、脳の病気や変化によって発症する認知症でポピュラーな病名として、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などがあります。
要介護の認定に関しても、要介護1に認定された場合に一時金の支払いがおこなわれる保険もあれば、要介護3以上に認定されないと一時金の支払い対象にならない保険もあり、さまざまです。
認知症と診断されたら障害年金が保証される
認知症と医師に診断されると、年金という形で、一定期間もしくは一生涯にわたって、毎年一定額の保険金を受けとれるという保障内容です。
年金は年額で数十万程度がほとんどで、要介護認定によって年額が変わる保険もあるようです。受給期間は、保障の要件を満たしていれば障害保証を受けられ、保険料も免除になるものが多いようです。一時金と比べると、一度に受け取れる金額は少ないですが、介護保険サービスなどを毎月利用される方などは介護費用の負担軽減として使える保障内容でしょう。
給付の条件としては、要介護に認定されるか、もしくは医師の診断医より認知症と診断された場合、多くの保険商品で受給の対象となるようです。
認知症がすすんだら介護費用として一時金が保障される
この保障は、要介護認定を受けたり、認知症の診断をされると一定の金額を受給できるというところは、先ほどまで解説してきた、一時金や生涯年金と同じですが、保障の使用目的が、介護に直接かかわってくる内容になっています。
例えば、介護生活が長期にわたり、要介護認定が、はじめは要介護1だったのが、月日が経ち、要介護3に認定された。それによって自宅をリフォームする必要が出たり、車いすや介護ベッドを購入する必要が出た。そのようなときに、公的介護保険(介護保険制度)ではサポートの対象にならない部分を保険で保障、サポートするというものです。
例えば、自宅に手すりを付ける。車いすや介護ベッドなどの福祉用具を購入する。このような場合、介護保険制度でも自宅の改修では、20万円までを上限に補助が使え、福祉用具であれば、補助の対象になっている物品に限り、購入金額の1割まで補助が使えます。ですが、自宅のリフォームなどでは、20万円の補助では賄えない場合もあります。そのようなときに保険で負担を軽減できるという保障を備えている保険商品があります。
またこれ以外にも、定期的に通院する際に、家族に代わって病院内の介助を行ってくれる保障をしている保険商品もあります。
保険で認知症のトラブルに対応してくれる
昨今、認知症のご高齢者が関わる事故やトラブルが、ニュースやインターネットで多く取り上げられています。
もの忘れの進んだご高齢者が、お財布を持たずに商店に入り、レジを取らずに店の外に出てしまった。道路を逆走したり、ブレーキとアクセルを踏み間違えて事故を起こしたり。また、認知症の症状により近隣住民といさかいやトラブルを起こし、相手にケガをさせてしまった・・・
このような、認知症のご高齢者が起こすトラブルは、一緒に暮らすご家族にとって、とても心理的負担ともなりますし、金銭の保障を求められるケースにも発展しかねません。
そんな、認知症高齢者が関わるトラブルに対応してくれる保険商品があるのでご紹介します。
この保険商品では、保険で該当する範囲で、最大1000万円までの保障をおこなってくれます。
先ほどまでご紹介した、一時金や生涯年金のような保障ではありませんが、もしも、一緒に暮らすご家族に認知症の症状が見られ、今現在、対応に苦慮するような状態であれば、ご家族の金銭的、心理的負担の軽減になってくれる保険商品であると思います。
認知症保険で保障を受けられる条件
先の章で、認知症保険の代表的な保障内容について解説してみましたが、では、どのような状態になった時に保障を受けられるのか?保険への加入を検討している人にとっては、とても気になる点ではないでしょうか。
先ほどもお伝えしたように、認知症を発症すると様々な症状が現れますが、ここからは、認知症保険では、どのような条件を満たすと保障を受けられるのか、認知症のどのような症状が現れると保障の対象になるのか、詳しく解説してみようと思います。
認知症の症状が「一定期間続いている」
多くの保険会社が販売している認知症保険では、保障を受ける際の条件の1つに「認知症の症状がある一定期間続いている」を設けています。
がん保険などでは、医師にがんと診断された時点で保険給付を受けられるものもありますが、認知症保険の多くでは、まず、医師から「認知症である」と確定診断をされることが必須条件となります。そして、認知症と確定診断をされた後も「一定期間、認知症の状態が続いている」ことによって保障の条件を満たすものが一般的です。
認知症の確定診断は、かかりつけのお医者さんに認知症の検査を依頼し、診断に必要な検査や問診を行ってもらうことで、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症などの確定診断が出ます。※認知症の診断について詳しく解説した記事をご紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。
これは認知症?心配になったら認知症検査を受けましょう!
もし、かかりつけのお医者さんから、「認知症の専門医診てもらったほうがよい」と言われた場合には、お医者さんから紹介してもらうか、もしくはこれからご紹介するホームページから、お住まいの近くで認知症の専門医を探して見てください。
「引用元:公益社団法人 認知症の人と家族の会 ホームページ」
認知症の症状に続いている「一定期間」について、症状が続いていることを証明する方法などは保険会社や保険商品によって様々ですから、これは加入を検討している段階で、事前に保険会社に確認をとったほうが良いでしょう。
要介護認定をされた
要介護認定という用語をご存知でしょうか?ホームヘルパーやデイサービスといった介護サービスをご存知の方も多いかもしれませんが、この介護サービスは国の定めた保険制度である介護保険制度の中で利用できる介護サービスです。
介護保険制度で利用できる介護サービスには、ホームヘルパーやデイサービス以外にも様々な介護サービスがあります。これらの介護サービスを利用するためには、ある条件を満たすことが必要となります。それが要介護認定です。
「引用元:神奈川県ホームページより」
要介護認定には、要介護1から要介護5までの5段階と、要介護1に満たない段階である要支援1と要支援2の、計7段階の認定基準があります。この要介護や要支援といった認定基準は、介護保険制度の中で国が定めた「ご高齢者が日々の生活を継続するためにはどの程度の介護が必要になるのか」を図る基準となるもので、各保険会社で販売されている保険商品の多くに、この要介護1から要支援2までの計7段階の認定基準の中で、要支援2、もしくは要介護1以上に認定されていることを保険給付の保障条件と定めているものが多くみられます。この要介護認定は、認定を受けようとしているご高齢者の住民票がある市区町村の役所から認定を受けなければいけません。
要介護認定については、認定を受けるための手続き方法などについて詳しく解説した記事がありますので、これから要介護認定を受けようと思っている方、まだ、要介護認定を受けていない方はぜひ参考にしてみてください。
器質性の認知症と診断された
認知症には、アルツハイマー型認知症や、脳血管性認知症など、様々な種類の認知症がありますが、その様々な種類の認知症を大きくまとめて分類すると、2つの分類に分けられます。
1つは器質性の認知症というものです。そして、もう1つが機能性の認知症というもので、様々な認知症を大きくまとめるとこの2つにまとめられます。
器質性の認知症は、脳の萎縮や脳内出血、脳梗塞や脳塞栓といった、脳の病気や変化によって発症する認知症でポピュラーな病名として、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などがあります。これに対して、機能性の認知症は、認知症の原因となるような脳の障害がみられないにも関わらず、ご高齢者に多くみられる、老人性のうつ病やせん妄、またその他の精神障害が原因となって認知症の症状が発症します。これを機能性の認知症といいます。
各保険会社で販売されている認知症保険商品では、保障の対象条件の1つに、脳の萎縮や脳の病気が原因となって発症する器質性の認知症と診断されていることを条件にしているものが多くみられます。
見当識障害の症状がみられるようになった
認知症が進行すると、発症した多くの方に見られる症状の1つに見当識障害というものがあります。
この見当識とは、現在の時刻や今日の日付、自分の住んでいる家や場所、自分の目の前にいる人物や、いつも一緒に住んでいる家族など、自分が今置かれている環境や状況を理解する能力を意味する言葉です。
見当識障害という症状があらわれると、こういった、時間の感覚があやふやになり、症状が進行すると、昼と夜の認識ができなくなって、夜中に突然うろうろと外に出ようとしたりします。また、場所の理解ができなくなると、家の外に出たら自分の家がどこにあるのかわからなくなり、外出先から家に帰ってこれなくなったりもします。
認知症保険では、この見当識障害の症状がみられることが、保険給付の対象条件の1つになっているものが多くみられます。
※ここでは、見当識障害について詳しく解説されています。
「引用元:看護のお仕事 ハテナース」
※見当識障害とはどのようなものか原因や対応について知りたい
認知症保険の加入条件はどんなもの?
先ほどまで、認知症保険について、保障内容や保障を受ける際の条件などについて解説しましたが、ここでは、認知症保険に加入する際の必須となる条件などについて解説しようと思います。
一般的な保険会社から販売されている医療保険商品などでも、保険に加入する際には、年齢の制限や持病、病歴など、さまざまな条件を設けている保険商品がありますが、認知症保険では、加入するにあたってどのような条件を設けているのか、解説しますので、加入を検討されて方は、ぜひ参考にしてみてください。
要介護もしくは要支援に認定されていないこと
公的介護保険(介護保険制度)で要介護、もしくは要支援の認定がされていないことを加入の条件にしている保険商品があります。
認知症保険という商品名なので、「認知症になっている人向けの保険」このように思う方もいるかもしれませんがこの認知症保険は、現在はお元気なご高齢者さんが、将来、認知症を発症したときに備える保険商品です。
すでに認知症を発症していて、ホームヘルパーやデイサービスなどの介護保険サービスを利用されている方や、介護サービスは利用していないが、要介護や要支援などの介護認定を受けている方だと加入できない保険商品もあります。
ですが、保険商品によっては、要介護1もしくは要支援であれば加入できる保険商品もありますので、加入をご検討されている方は加入前にご確認してみるとよいでしょう。
今までに認知症の診断や治療を受けたことがない
加入する前に、医師により認知症の診断をされている方や、今すでに認知症の治療や服薬をされている方は加入できない場合があります。
これは、多くの認知症保険で、加入の条件にされています。先ほどもお伝えしましたが、認知症保険という保険商品は現在、お元気なご高齢者が、将来認知症を発症されたときに備える保険ですから、すでに認知症と診断されている方や、認知症の治療を行っている方は、加入ができない保険商品がありますので、加入をご検討されている保険商品があった場合には確認してみてください。
入院していない。もしくは長期の療養中では無い
加入時に入院をしている。もしくは長期の治療が必要な病気である場合には、保険商品によっては加入ができない場合があります。
また、一般的な医療保険商品でも加入時に健康診断書の提出を求められたり、保険会社で定めた健康状態を確認されることがありますが、認知症保険でも同じように加入時の健康状態を確認し、保険会社で定めた状態に満たないと判断されると加入ができない場合がある場合もあります。
認知症保険を選ぶときのポイント
ここまで、認知症保険について
「保証内容や加入の条件」
「どんな時に使えば良いのか」
「どんな時に役立つ保険なのか」などについて解説してきましたが、ここでは認知症保険の選び方について解説してみようと思います。
一般的な医療保険商品でも、いざ、加入しようと思ってみても、自分が求めている保障内容を満たしている保険商品はいったいどの保険商品なのか?どの保険商品を選べばよいのか?数多くある保険商品の中から自分の求めている保障内容を考え、加入後の支払いなども考えたとき、どの保険商品を選べばよいのか迷ってしまう方が多いと思います。そこで、ここでは、認知症保険を選ぶ際の注意点を3つに絞って解説してみようと思います。
保障の内容は希望と合っているか
保険に入る目的は、保障内容が「加入者の目的と合致していること」これが保険を選ぶ際の大前提ではないでしょうか。
医療保険であれば、入院した際には、1日どれぐらいの保証が受けられるのか?通院や休業した際の保障は?死亡保険であれば、亡くなった際にどれぐらいの保険金を残された家族に残すことができるのか。このように、自分が希望する保障内容を、加入を検討している保険商品が満たしているのか、これは保険を選ぶ際にとても大事なことでしょう。
認知症保険の保障内容では、多くの保険商品で、大きく分けて2つの保障内容が備えられています。
まず1つ目の保障が「一時金」というもので、医師から認知症と診断されたり、介護保険で要介護認定を受けると給付の条件を満たし、金銭での保証を受けられるというものです。
もう1つが、「障害年金」というもので、これも一時金と同じような条件を満たすと、条件を満たした日から、生涯にわたって年金という形で金銭の保障を受けられるものです。
一時金での保証では、数十万円から百万円単位に至るまで、保険商品や保障の条件によって金額はさまざまですが、一度に大きな金額の保障を受けたい方は、こちらの保障内容をよく確認したほうが良いでしょう。
対して、障害年金での保障は、一時金のように、一回で大きな金額を保障されるものではなく、年金という形で生涯にわたり金銭での保障が受けられ、保険金の支払いも免除される保障内容です。
保障をどのような目的で使うのかも、一時金タイプを選ぶか年金タイプを選ぶかを考える際のポイントとなるかもしれませんが、保障を一括で使用したいのか、それとも持続的に保障を受けて介護費用に充当するのかなどを保険を選ぶ際の基準にしてみてもよいかもしれません。
保障の条件は希望と合っているか
先ほど、保障内容の章でもお伝えしましたが、認知症保険の保障を受ける際の条件は、大きく分けて2つの条件を備えているものが多く見られます。
まず1つ目の条件は、医師から認知症の診断を受けること。もう一つの条件が、介護保険で要介護に認定されること。この2つを保障の条件にしている保険商品が多く見られますが、医師からの認知症の診断以外にも保障の条件を設けている保険商品もあるので注意が必要です。
例えば、認知症の症状がある一定期間(半年から年単位で設定されている場合もあります)認められた場合に保障の対象となるものや、見当識障害がみられる場合など、保険商品によって様々な条件を設けている場合があります。
軽いもの忘れなどの認知症の初期症状が認められれば、保障の対象になる保険商品もあれば、見当識障害のように今日の日付もわからない、自分のいる家である認識力も低下するなどの、ある程度認知症の症状が進行した状態が医師によって認められた段階で保障の条件を満たす保険商品もあります。
また、介護保険での要介護認定でも、軽度の認定(要支援1もしくは要支援2)でも、要介護状態と判定され、保障の対象となる保険商品もあれば、ある程度、介護が重度化した要介護3以上に認定された場合を保障の条件にしている保険商品もあります。
介護度の軽い、重度にかかわらず、介護サービスを利用するのであれば、介護が始まった初期からでも、介護保険の費用負担は発生しますから、介護費用での負担を軽減したい場合には介護度が軽い状態でも保障を受けることができる保険商品を選ぶとよいでしょう。
すでに加入している保険と保障内容が重なっていないか
昨今、一般的な医療保険商品でも、ご高齢者に介護が必要となった場合の保障内容を含むものが数多く販売されています。また、保険商品は販売後も、保証内容などを改訂するなど場合も多くみられ、昨今の高齢化社会の世相を反映し、ご高齢者をターゲットとしたサービスを、既存の保険商品に加えるなども多々見られます。
こういった保険商品の保障内容には、認知症保険が謳っている、介護が必要になった際の保障や、認知症と診断された際の保障などと重複した内容を含んでいる場合もありますので、現在、加入されている医療保険などがあるのであれば、一度保障内容を確認してみてください。
新しく加入した認知症保険の保障内容が、「すでに加入していた保険商品でカバーできた保障内容だった」このようなことにならないよう、もしも、今後認知症保険に加入することを検討する機会が出た時にはすでに加入している保険商品の保障内容を一度チェックしてみてください。
認知症保険についてまとめます
昨今、テレビやインターネットなどで、認知症のご高齢者が関わる事故やトラブルが多く取り上げられています。また、事故やトラブル以外でも、認知症を発症した自分の親や親族を介護する芸能人の介護秘話なども多く取り上げられることも多くなっていて、これも認知症への注目が高まる要因となっています。
このような、認知症への注目の高まりを受けて、以前であれば、認知症に対して、どこか他人事のように考えていた方でも、もしも今後、自分の親や高齢の親族が認知症を発症したら
「どのように介護をすればよいのか」
「介護への負担をどのように軽減すればよいのか」
「介護の費用をどのように捻出すればよいか」
「仕事と介護を両立できるのか」
このような不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今、私たちの暮らしている日本では、過去にないスピードで認知症高齢者の人口が増加しています。
2015年1月に厚生労働省からの発表によると、日本の認知症の患者数は2012年の時点で、約462万人で、これは65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症であると推計されています。その後も、人口に占める高齢者と認知症高齢者の数は増加する予測となっており、第一次ベビーブームか起きた団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症の患者数は700万人に達するといわれています。これは、65歳以上の高齢者の約5人に1人が占める割合です。
もう遠くない未来に、自分の親族や家族に認知症を発症したご高齢者がいることが特別なことではなくなるかもしれません。
このような、社会情勢もあり、各保険会社が次々と「認知症保険」を販売しています。
※今回、記事の中ではこのような認知症保険商品をご紹介しました。
※クリックしていただくと、保険内容を説明しているホームページが開きますので、ぜひ参考にしてみてください。
認知症の介護では、さまざまな負担が生じます。1つは、介護に関わることでの心理的身体的な負担。そしてもう1つの負担が、介護などで発生する費用への負担です。
心理的、身体的な負担を軽減するために、公的な保険である介護保険制度がありますが、介護サービスを利用すれば、身体的、心理的負担は軽減することができますが、介護サービスを利用した分の費用負担が発生します。また、認知症を発症したご高齢者には、認知症の治療での費用負担も発生します。
認知症保険では、このような、認知症を発症したご高齢者への、治療や介護で発生する費用負担の軽減を主な保証内容としているもの
が多くみられます。
費用負担への保障以外にも、認知症によるトラブルに対応した保障を謳っている保険商品や通院の補助といった介護サービスを含む保険商品もあります。
介護は一度始まれば、いつ終わるかわからない長い道のりになる場合もあります。そのようなことになった場合、介護する側の最も大きな負担となる金銭的な負担を軽減することができるのが
認知症保険という保険商品です。
今回、ここまでお伝えしてきた内容が、今後保険への加入を検討している方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。