まえがき
認知症は、加齢に伴う脳の萎縮や、脳の病気やケガなどが原因で脳に障害が起こることによって発症します。
脳の病気では、高血圧や脳梗塞が原因となり、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳の神経細胞に障害が起こり、脳のケガでは、事故や転倒が原因で頭を強打したことで脳内出血が起こり、脳内にたまった血液が脳細胞を破壊することで障害が起こります。
このように、認知症を発症する原因の多くは、加齢に伴う脳の萎縮や、病気やケガなどですが、脳の病気やケガなど以外にも認知症を発症する原因があることをご存知でしょうか?
それは、運動不足によって起こる筋力の低下です。
実は身体の筋肉と脳は密接な関係にあり、人は体を動かすと筋肉から様々な物質が分泌されます。
この身体を動かすことで分泌される物質にイシリンという物質があるのですが、このイシリンという物質は、血液を通して脳へ達し、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)という新しい神経を発達、成長、増殖させる物質の分泌も促すと言われています。また、このBDNF(脳由来神経栄養因子)やイシリンという脳の成長、維持に重要な物質が、筋肉を動かすことで多く分泌され、脳の機能を高める効果があるとも言われています。
運動などで体を動かすと、身体全身の血行が良くなり、ポカポカと身体が温まる。こんな経験は誰もが経験あると思いますが、身体全身の血行が良くなると、脳への血流も良くなります。そして、脳への血流が活発化されることで、脳の神経細胞であるニューロンという生物の脳を構成する神経細胞が新しくつくられます。
このニューロンという神経細胞は、情報処理に優れた神経細胞で、成人の脳には100億から1000億程度存在すると言われていますが、このニューロンが新しく作られると、ニューロン同士を結び付け、脳内への情報伝達を行う役割をするシナプスという部位が活発に活動を行うようになります。そして、このシナプスが活発に活動を行うようになると、情報伝達を行うニューロンの活動も活発化し、脳の機能活性化や維持につながり、結果、認知症の予防にもなると言われています。
誰でも歳を重ねることによって徐々に足腰が不自由になり、若いころのように体を動かすことができなくなっていきます。
足が思うように動かなくなったり、腰や膝に痛みが出たりするようになると、外に出る機会が減ったり、歩く機会も少なくなってくるものですが、近年、高齢者であっても、適度な運動を行うことが身体と脳神経の機能を改善し、認知症の予防にも有効であることも分かってきました。
また、あるアルツハイマー病研究センターの所長は、「運動は薬・知的活動・サプリメント・ダイエットより予防効果が期待できる」とも述べているそうです。
高齢化社会を超えて、超高齢化社会と言われて久しいのが、私たちの住む日本ですが、日本の総人口に占める65歳以上いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)の人口数は、平成27年(2015年)にはは3,387万人となり、その後も増加していくと言われています。
平成54年(2042年)には3,935万人でピークを迎え、平成77年(2065年)には総人口に占める高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上。平成77年(2065年)には75歳以上人口が総人口の25.5%となり約4人に1人が75歳以上になるとも言われています。
また、少子高齢化社会と言われている日本の総人口は、今後、緩やかに減少するとも言われており、若い働き手の世代の数は減っていくのに対し、高齢者の数は今後増加していく中で、今60代の団塊世代に注目をされているのがフィットネスクラブなどの健康運動サービスです。
「いつまでも健康でいたい」「元気に長生きしたい」という利用する側のニーズと、介護予防・認知症予防の効果に注目した健康運動サービス業界によるサービスが全国で広がっています。
政府も、高齢者の増加に伴い、年々増え続ける医療費抑制などのため、事業者の認証制度を今年4月から導入するなど、健康産業の育成を政策の柱に掲げていて、これも健康運動サービス業界にとっては追い風となっています。
このように、昨今の高齢者増大に伴い、日本全国で活性化しているフィットネスクラブなどの健康運動サービスですが、ここからは、運動を行うことで得られる介護予防・認知症予防への効果や、フィットネスクラブを利用するメリット、またサービス事業者が提供しているサービス内容などについて解説してみようと思います。
今、介護予防のフィットネスクラブが注目されています!
先ほど、「まえがき」でもお伝えしましたが、超高齢化社会と言われている私たちの住んでいる日本では、高齢者人口の総人口に占める割合は、昭和60年に10%を超え、20年後の平成17年には20%を超え、その8年後の25年に25.0%となり、初めて4人に1人が高齢者となりました。
今後も65歳以上の高齢者の数は増加を続けると予測されており、平成29年に行われた、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(昭和46年~49年)に生まれた世代が65歳以上となる平成52年(2040年)には、35.3%になると見込まれています。
さらに今後、高齢者人口の増加に伴って認知症を発症する人の数も増加すると言われており、65歳以上の認知症高齢者数の将来推計について、平成24(2012)年もデータでは認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)でしたが、37(2025)年には、認知症高齢者数は700万人を超え、約5人に1人が認知症を発症するとの推計もあります。
このような将来への推計もあるなか、高齢者を支えるべき介護の人材不足が社会問題となっていることもあり、今、高齢者と言われている人たちには「認知症になりたくない・・・」「介護を受けるようになりたくない・・・」「いつまでも元気に健康でいたい」と不安を抱えている方も少なくないようです。
ですが、「自分で運動をしようと思っても、どのような運動をしたらよいのかわからない・・・」「家で1人で運動していても張り合いがない・・・」「デイサービスに通いたくても、介護認定が無いと通えないと言われてしまった・・・」「整形外科に通っても、待ち時間ばかり長くて、実際にリハビリの時間はほんの少しだけ・・・」
このように、運動をしていつまでも健康でいたいと思っていても、どのように運動をすればよいのかわからない。運動をするのであれば、しっかりと成果を出せる運動を続けたい。このような思いを持つ高齢者のニーズと、昨今注目されている介護予防への注目が高まっていることもあり、スポーツクラブを展開している多くの大手企業が、介護予防や認知症予防を目的とした運動メニューを実施しています。
また、経済産業省「経済産業省・産業活動分析析(平成26年10~12月期(年間回顧))」では、20歳代から60歳代のフィットネスクラブの会員数の推移が以下のように分析されています。
「経済産業省・産業活動分析析(平成26年10~12月期(年間回顧))より引用
このグラフからもわかるように、20歳代~30歳代のフィットネスクラブ会員数が年々減っているのと対比して、60歳代以上の会員比率が毎年上昇しています。
この理由のひとつには、いわゆる団塊の世代と言われる65歳以上の世代に「いつまでも元気でいたい」「健康でいたい」と言うニーズが高まっていると同時に、子育ても終わり、会社も定年し、時間とお金に多少の余裕ができたシニア層と言われる世代の利用者数が増えていることも考えられます。
このように、60歳以上のシニア層と言われる人たちが多く利用するようになっているフィットネスクラブですが、次の章からは、フィットネスクラブを利用するとどのような効果が得られるのか、介護予防・認知症予防にどのような効果があるのかなどについて、実例も交えながら詳しく解説してみたいと思います。
介護予防になぜフィットネスクラブなのか?
多くのフィットネスクラブでは、エアロバイクなどのトレーニングマシーンを使った筋肉トレーニングや、ストレッチやヨガを取り入れた有酸素運動が行われています。
筋肉トレーニングと聞くと、若い男性が、胸や腕の筋肉を鍛えるために行っていたり、最近では、若い女性がダイエットを目的として行う。このようなことを思い浮かべる方も多いのではないかと思いますが、筋肉トレーニングは若い方だけではなく、年齢を重ねた高齢者の方にこそ不可欠なものであることをご存知でしょうか?
高齢者の方が行う運動の代表的なものとして、ウォーキングやジョギングがあります。この、ウォーキングを定期的に行うことで、足や腰の筋肉の維持には役立ちますが、老化によって衰えた足腰の筋肉を鍛えようと思ったら、かなりの長時間ウォーキングやジョギングを行う必要があります。ですが、膝や太ももの筋肉が衰えている方が長時間のウォーキングやジョギングを行うことは、かえって足首などの関節を痛める原因ともなります。
※ウォーキングの効果については以下の記事も参考にしてみてください。
また、老化によって全身の筋肉が衰えると様々な障害が起こります。例えば、足腰の筋肉が衰えることによって、歩行する機会が減り、家の外に出る機会も減ってきます。歩く機会が減ることでさらに活動量が減り、さらに足腰の筋肉量が減るといった悪循環に陥る可能性もありますし、足腰の筋肉が衰えることで、歩行が不安定になったり、転倒の危険性も高まります。
筋肉量が減ることで、身体の全身に張り巡らされている血液の循環も悪化しますし、血液の循環が悪化することで、全身の内臓や脳に十分な血液が運ばれなくなったり、筋肉を動かすために必要な酸素が血液と一緒に運ばれなくなったりもします。
ですが、高齢者であっても筋肉は鍛えることができるのか?老化によって衰えた筋肉を若いころのように元に戻すことができるのか?このような疑問を持たれる方もいるかもしれません。
結論から言えば、若いころのような筋肉を取り戻すことはできないかもしれません。ですが、老化を食い止めることや、歩くことや、物を持ったりすることなど、日々の生活で困難を感じていたことが、昔のようにできるようになることは十分可能です。
では、筋肉トレーニングを行うことでどのような効果が得られるのか、例をあげて解説してみます。
1.転倒予防・歩行能力が向上する
全身の筋肉を鍛えることによって、身体を支えている筋肉である抗重力筋が増えます。この抗重力筋が増えることによって、身体の姿勢を保つ機能が向上したり、歩行する際の姿勢が安定します。身体の姿勢が安定することにより、歩行状態も安定し、転倒の危険性を減らすことにもつながります。
2.腰痛・膝通の改善、予防ができる
足腰の筋肉を鍛えることによって、関節への負担を減らすことができ、腰痛や膝痛の軽減や予防にもつながります。
3.生活習慣病の予防や改善ができる
筋肉を鍛えることによって、糖の代謝が改善されたり、コレステロールなどの代謝を改善する効果が得られます。また、適切な筋肉トレーニングを続けることで、高血圧予防の効果を得ることもでき、メタボリックシンドロームの予防、改善にもつながります。
4.体脂肪を減らすことができる
ゆっくりと少しずつ筋肉に負荷をかけていくスロートレーニングや、速筋繊維を鍛えるためのダンベルトレーニングといった有酸素運動を積極的に行うことで、体脂肪を燃焼しやすい身体を作り出すことにもつながります。
5.介護予防の効果が期待できる
老化によって起こる身体機能の低下は、要介護予備軍と言われる「フレイル」や、「フレイル」へとつながる状態である「サルコペニア」を発症する原因ともなります。
「フレイル」とは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態で、要介護に至る可能性が大である状態として、日本老年医学会が2014年に提唱したものです。多くの高齢者は、健康な状態から、老化によって筋力が衰える「サルコペニア」という状態を経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至るとも言われています。
この、将来介護が必要となるかもしれない、要介護予備軍と言われる「フレイル」や「サルコペニア」を発症する原因には様々なことが言われていますが、発症する原因の1つに、老化に伴う身体機能の衰えがあります。
この身体機能の衰えを、筋肉トレーニングや有酸素運動を行うことで、筋肉量の向上や肺活量の増大させ「フレイル」や「サルコペニア」といった、将来、要介護状態になることの予防が期待できます。
このように、高齢者の方であっても、有酸素運動や筋肉トレーニングを行うことで、老化の予防や、身体機能の向上や転倒予防、また、要介護状態への予防、改善など様々な効果が期待できることが理解していただけたでしょうか。
ですが、このような筋肉トレーニングや有酸素運動を、自宅で1人で行うことは正直難しいと思います。高価なトレーニング機器を購入することは金銭的な負担が大きいですし、本格的な運動方法を調べることも、本格的な運動を1人で行うのも大変です。このような専門的な筋肉トレーニングや有酸素運動を、その人1人1人の状態に合わせた方法で、専門知識を持ったコーチがしっかりと指導をしてくれるのがフィットネスクラブです。
では、次の章では、高齢者向けのフィットネスクラブではどのようなトレーニングが行われているのか、利用する際の料金や場所、自宅の近所にあるフィットネスクラブの探し方などについて実際に営業しているジムなどの紹介も交えながら解説してみようと思います。
60歳以上の高齢者におススメするフィットネスクラブTOP5!
それでは、ここからは多くの高齢者の方たちが注目している「介護予防」プログラムを積極的に取り入れているフィットネスクラブをご紹介していこうと思います。取り組んでいる運動メニューや料金体系にも、各フィットネスクラブごとに特徴がありますので、今後ご利用を検討されている方はぜひ参考にしていただければと思います。
わずか30分の運動で、骨粗しょう症の予防ができるのが「カーブス」
全国に1500店舗を展開し、「スタッフも会員さんも女性のみ」「予約なしで自分の都合に合わせて好きなときに運動できる」「運動時間は30分で終了」という運動が苦手な女性や、老化による体力低下を心配している女性に向けた運動プログラムを全国で展開しているのが、「女性だけの30分健康体操教室カーブス」です。
利用できる会員さんは女性に限定され、運動を指導するスタッフもすべて女性というのもカーブスの特徴で、どうしても男性の目を気にしてしまう方や、年齢を気にされてる方にとっては、「女性でも気軽に通える」というのは大きなメリットでもあると思います。カーブスを利用されている方は40歳代から60歳代が中心で、利用されている最高齢者さんはなんと、101歳だそうです!
カーブスが提供する運動プログラムは、12種類のマシーンを使ったわずか30分間という短時間のプログラムです。カーブスに設置されている12種類のマシーンで各1分弱の運動を順番に行い、さらに、運動後には12種類のストレッチを行い、運動後の疲労回復や筋肉のダメージを軽減しています。
このわずか30分の運動の中で、身体の脂肪を燃焼させるために理想的な状態である、心拍数が平常時の60%から80%の状態を筋肉トレーニングで作り出し、その後行う有酸素運動で脂肪燃焼に最適な状態をさらに維持するそうです。また、この脂肪燃焼に最適な状態が続くことによって、身体の中にある毛細血管が活性化し、血液の流れをよくする効果も生まれるそうです。
これ以外にも、わずか30分間のなかに、筋力向上や骨密度の向上を目的としたプログラムが組み込まれており、「短時間で効果が欲しい」「いつまでも元気で若々しくいたい」と願うシニア女性や、「腰が痛くて家事に支障が出ている」「骨粗しょう症で膝や腰が痛くて歩くのが大変」などと、シニアに多くみられるお悩みを、筋肉トレーニングを行うことで改善・予防する効果的な運動プログラムを提供しているのも、カーブスが全国で多くの人気を得ている秘密かもしれません。
高齢者向け筋肉トレーニング+歩行が特徴! Konami(コナミ)Sports Club
直営店舗、委託店舗を含め、全国で300店舗以上を展開しているのが、株式会社コナミスポーツクラブが運営する「Konami(コナミ)Sports Club」です。
コナミスポーツが25年以上にわかって提供してきたマンツーマン型のダイエットプログラムである「バイオメトリクス」や、1人1人にあった運動メニューがマンツーマンで提供される「パーソナルプログラム」、ダイエットを目的とした20代の女性から、肩こりで悩む50歳の女性まで幅広いメニューが用意されている「パーソナルトレーニング」など、様々な運動メニューが特徴的であるのがこの「Konami(コナミ)Sports Club」ですが、このスポーツクラブで提供されるメニューの中に、60歳以上のシニアをターゲットとした「 OyZ(オイズ)」という運動プログラムがあります。
この「 OyZ(オイズ)」という運動プログラムは60歳以上のシニア層をターゲットとしたもので、トレーニング内容は大きく分けて2つになります。1つ目のトレーニング内容は、転倒予防、腰痛予防、身体のバランスを整える姿勢改善運動などを主とした「足腰強化コース」と、足踏み運動やステップ体操などの有酸素運動を取り入れて脳への刺激を目的としたトレーニングである「脳活性化コース」の2つがトレーニングの柱です。
「足腰強化コース」と「脳活性化コース」の2つのプログラムに共通しているのは、両プログラムとも3分程度の運動を繰り返し、全部で20分の運動メニューとしていることです。60歳以上のシニアにも無理なく行えるよう、プログラム時間を20分間に絞り、さらにシニア層の多くが悩みとして抱えている、「いつまでも元気に自分の足で歩きたい」「腰痛を予防、改善したい」そして、「認知症になりたくない」「脳に刺激を与えたい」というニーズに対応したプログラム内容となっています。
利用されている年齢層は、80歳代の男性もいれば、70歳代の女性まで様々なシニア層が利用されているようで、利用されている方の多くが「筋肉がついて、階段をトントン上がれるようになった」「趣味のゴルフで79のスコアを出した」「友人から姿勢が良くなったと言われた」など、多くのユーザーから効果を実感する声が上がっているようです。
「Konami(コナミ)Sports Club」では、この他にも、60歳からのシニアをターゲットとした、「Days(デイズ)」というプログラムも用意されています。
この「Days(デイズ)」というプログラムは、平日の夕方5時までの間であれば自分の好きな時間を選んで利用ができ、さらにトレーニングの回数も自分のペースで選択できて、契約したスポーツ施設であれば、全国にある「Konami(コナミ)Sports Club」を利用ができるといったサービスです。利用回数を自分のペースに合わせて選べるほか、利用料金も週1回の利用から、回数制限なしのプランまで設定されていて、自分の生活スタイルと身体の調子に合わせて無理なく利用することができるのもこの「Days(デイズ)」の特徴でもあります。
※ご自宅の近くで「Days(デイズ)」を利用できる施設を探す
100歳まで背筋ピン!介護予防が特徴の 快活・楽楽倶楽部
老化によって起こる、背骨や腰の曲がりの改善、予防のプログラムを提供しているのが、「スポーツクラブ・ビック・エス」が全国に展開するフィットネスクラブである「快活・楽楽倶楽部」です。
100歳まで背筋ピンッ!「ゆがみ改善」でワクワク介護予防を、提供するプログラムのキャッチコピーにしていることからもわかるように、60歳以上のシニア世代をターゲットにした運動プログラムです。提供される運動プログラムは3つの目的を持ったメニューとなっており、背骨や腰の曲がりの原因となる、骨の変化、筋力の変化、関節の変化という、日常生活上の動作に影響を及ぼす3つの原因を改善するために効果的なメニューがそろっています。
1つ目の運動メニューは、柔軟な身体をつくり、維持するために行われる「姿勢プラス」という運動と「ボールエクササイズ」です。
姿勢プラスと言う運動は、身体の余分な緊張を開放し、身体の自然治癒力を引き出しながら体の姿勢も整える運動です。柔軟体操などで行われるストレッチによく似ていますが、自分の動きやすい動作を選んで身体を動かせるようにメニューがつくられていて、腰痛や肩こり、膝の痛みを持っている方には、痛みの無い範囲で身体を動かし、姿勢を整えていくので、高齢者の方でも取り組める内容となっているようです。
動画【姿勢改善】上体ひねり 骨盤.背骨.肩のねじれを整える 姿勢プラス
動画【姿勢改善】横座り 骨盤.股関節のひずみを整える 姿勢プラス
ボールエクササイズでは、直径50センチ前後のゴムボールに座り、足の腿(もも)上げや、骨盤をひねる動作を行います。この動作を行うことで、股関節や背骨の動きが滑らかになる効果を得ることができるようです。また、身体のバランス感覚の向上にも効果があるようです。
2つ目の運動メニューは、快活に身体を動かすために必要な、筋力とスタミナを手に入れる目的で行われる「タフエアロボード」と「ゴム体操」という運動です。
「タフエアロボード」では、10㎝程度の台を使い、1分間に20回~25回程度の速さで台への乗り降りを繰り返します。台への乗り降り運動は一回10分間を2セット行います。
この運動に慣れた方は、両手にダンベルを持って、台へ上り降りする際に肘の曲げ伸ばしや腕の上げ下げを加えたりもするそうで、この運動を行うことで、一般的に行われるウォーキングで消費されるカロリーの1.5倍から2倍の消費量が得られるほかに、腿(もも)やお尻の筋力アップへの項かもあるそうです。
ゴム体操では、ゴムひもを使った抗重力筋を鍛える筋肉トレーニングを行います。抗重力筋を鍛えることによって、身体の姿勢を保持するために必要な筋肉を鍛える効果があるそうです。
3つめの運動メニューが、機敏な動きを身につける目的で行われる「青竹ふみ体操」と「昔遊び体操」です。
「青竹ふみ体操」では青竹を足で踏みながら腕や指を動かします。この運動を行うことで、中高年になると硬くなりがちな足首や足の指をほぐす効果があるとともに、足の裏を刺激し、同時に手や指の動きを行うことで脳を刺激する効果もあるようです。
「昔遊び体操」では、けん玉やお手玉といった、シニアの方にもなじみの深い玩具を使って運動を行います。玩具を使うことで楽しんで筋力をつける効果が期待できるようです。
この「快活・楽楽倶楽部」を提供しているスポーツクラブ「ビッグ・エス」では、このほかにも各店舗で、水泳を取り入れた運動メニューや、ミドル層やシニア層でも気軽に行える様々な運動メニューが提供されています。
東急スポーツオアシスでは高齢者指導の専門家や器具とプログラムが豊富!
首都圏を中心に40店舗のスポーツクラブを運営しているのが、東急スポーツオアシスです。この東急スポーツオアシスが60歳以上のシニア向けに行っている健康プログラムが「らくティヴスクール」です。
この「らくティヴスクール」では60歳以上のシニア層向けへの介護予防も兼ねた運動プログラムにも積極的に実施されていて、60歳から90歳代まで、幅広い年齢層の方でも参加できるよう、体つくりをしたい人には「からだ備えるコース」膝や腰などに痛みを抱えている方には「からだ整えるコース」という2種類のプログラムが用意されています。
「からだ整えるコース」は、膝や腰、肩などに負担をかけず、正しい姿勢で日常生活ができ、日々楽に生活ができるようになることを目的としたプログラムです。
股関節や膝、肩の動きをよくするための運動や下半身の筋力をつける運動などを行うことで、身体全身の姿勢の改善を図り、身体全身の関節への負担を少なくすることを目的として行われます。自分の身体の体重に応じた負荷をかける運動なので、1人1人の体力や体の状態に応じてできる内容なので、普段あまり身体を動かす機会がないシニアの方でも安心して参加できるでしょう。
そして、この「らくティヴスクール」のもう1つのコース「からだ備えるコース」では、介護予防・認知症の予防に効果のある運動プログラムが多く用意されています。
では、この「からだ備えるコース」で行われている運動メニューをいくつかご紹介してみます。
からだ活性クラス
これまであまり使ってこなかった筋肉を活性化し、身体の機能改善をはかりながら、高齢期に必要となる身体の機能を高めることで、転倒を予防したり、日常生活が楽に行えることを目的としています。
パワトレクラス
立つ、歩くなどの機能が低下しないために筋力アップを行う運動を行います。順天堂大学の運動メソッドを活かした、脚や体幹の筋力維持、向上に効果的なプログラムが行われています。
脳活ウォーククラス
歩行運動やステップ運動を行いながら、認知機能の維持や予防を目指すプログラムが提供されています。バランス能力・歩行能力の向上を図りながら、脳の活性化に効果的なプログラムです
この他にも「らくティヴスクール」介護予防・認知症予防に効果的な運動メニューが数多く用意されており、普段あまり身体を動かす機会が少ないシニアの方でも、安全に気軽に取り組めるのも「らくティヴスクール」特徴です。
※ご自宅の近くで「らくティヴスクール」を利用できる施設を探す
1日3時間の介護予防リハビリができるのが「デイサービス ジョイリハ」
介護保険で要支援・要介護に認定されている方でもリハビリを行えるのが、「デイサービス ジョイリハ」です。
原則、介護保険で要介護・要支援に認定されている方が利用の対象で、1人で歩くことが困難な方や、認知症を発症している方でも利用できるのがこの「デイサービス ジョイリハ」です。また、介護保険で介護認定を持っていない方でも利用できる店舗もあるようですので、ご興味ある方は、お近くの店舗に問い合わせてみてください。
※ご自宅の近くで「デイサービス ジョイリハ 」を利用できる施設を探す
介護保険でのデイサービスと聞くと、朝、デイサービスのお迎えの車に乗って施設へ行き、お風呂の介助をしてもらい、昼食を施設で食べ、レクレーションをしたりお昼寝をしたりしながら夕方になって、デイサービスの車で家まで送ってもらう。このようなイメージを持たれる方が多いと思いますが、この「デイサービス ジョイリハ」は、一般的なデイサービスで提供されるサービスとは違い、お食事を出してもらったり、入浴の介助などは無く、施設で行っているのはリハビリ目的の運動が主となります。
※動画「デイサービス ジョイリハ」での1日はこんな様子です。
デイサービスの車で送り迎えをしてもらいデイサービスの施設に通うのは介護保険でのデイサービスと同じですが、施設についたら、理学療法士や作業療法士といった国家資格を持ったリハビリの専門家や、看護師の指導を受けながら1回3時間のリハビリメニューを行います。運動プログラムは大きく分けて2つのメニューが行われます。2つのプログラムで提供されるメニューをいくつかご紹介します。
グループレッスン(集団体操)
国家資格を持ったリハビリの専門家である理学療法士、作業療法士が作成した集団プログラムを行います。集団で運動することによって、他の利用されている方との交流をはかる効果もあるようです。
準備運動・ウォームアップストレッチ
運動前に身体を十分にほぐし、ケガの予防を運動効果の促進を促します。
リズム体操・有酸素運動
音楽に合わせて楽しく手足を動かし、老化によって衰えた持久力の向上を目指す運動を行います。
整理体操・ストレッチ・クールダウンストレッチ
運動後の身体と心を落ち着かせ、筋肉に残った疲労を軽減させます。
個別メニュー
利用されている方の持っている個々の課題に対して、個別の運動メニューを実施しているのがこの個別メニューです。
機能訓練・バランス・歩行
バスや電車の乗り降りを想定した段差の昇降や、傾斜のある場所や不安定な場所での歩行訓練を行います。また、歩行する際の足の出し方や着き方、歩くときの姿勢や歩幅など、1人1人にあったプログラムを実施し、安定して歩く方法と、歩いているときにふらついてしまったときに身体を立て直す方法を練習するプログラムです。
オリジナルマシン
全9種類のマシンを使って、11種類の運動を行います。それぞれのマシンは、マシンに備えられたセンサーで利用された方のメニューを記憶されていて、その方の状態や目的に応じて効果的な運動を行えるようになっています。
手技トレーニング
「お箸を使って食事がしたい」「洗濯物を自分で干したい」という、生活上で抱えているお1人お1人の課題に対し、国家資格を持ったリハビリの専門家である作業療法士が作成したプログラムを行います。この他には、デイサービスでの運動以外にも、利用されている方が自宅でも身体を動かす機会を習慣化してもらえるよう、簡単な体操の方法を記載した用紙が配布され、利用されていないときでも、自宅でも運動を自主的に行っていただけるような配慮が行われているようです。
介護保険で要支援・要介護に認定された方が利用対象となっているという利用の制約はありますが、一部店舗では要介護認定の無い方でも利用できる店舗もあるようなので、ご興味ある方は問い合わせしてみてください。
ご自宅の近くで「デイサービス ジョイリハ 」を利用できる施設を探す
まとめ
今回はここまで、60歳上のシニア層と呼ばれている方向けにぜひ注目していただきたいフィットネスクラブについて解説してみました。
各スポーツジムとも、普段あまり身体を動かす機会の少ないシニアの方でも、無理なく安全に行える運動プログラムを数多く用意していおり、その運動の多くが、介護予防・認知症予防に効果の期待できるものとなっています。また、昨今、シニア層の健康に対しての意識が高まっており、内閣府から発表された、「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果」からは、以下のような結果が発表されています。
引用元:内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果(概要版)」
引用元:内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果(概要版)」
引用元:内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果(概要版)」
この調査は、平成29年に内閣府によって行われ、全国に住む55歳上の男女3000人を対象に調査された結果です。この調査結果からもわかるように、健康状態については、約5人に1人があまりよくないと回答されており、健康上の問題から日常生活に影響を感じている方の数では、約5人に1人以上が「日常生活への影響がある」と回答しています。さらに、以前は問題なくできていたが、最近時に難しい日常生活上での活動では、歩行に関する動作や、物を持ったり運んだりする動作を難しいと感じている方が約半数に及んでいます。
「まえがき」でもお伝えしましたが、今後日本は、平成77年(2065年)には総人口に占める高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上。平成77年(2065年)には75歳以上人口が総人口の25.5%となり約4人に1人が75歳以上になるとも言われています。
また、高齢化が進む一方で、少子化の加速が進み、高齢者は増えていく一方で、その高齢者を支える若い世代の不足や、介護が必要となった人のお世話をする介護の人材不足も大きな社会問題となっています。このような社会情勢も影響し、「いつまでも元気でいたい」「子供たちの世話になりたくない」「認知症になりたくない」といったシニア層の高齢になっても自立した聖愛k津を続けたいという意識が高まっていて、こういったシニア層のニーズにこたえるべく、多くのスポーツクラブを運営する企業などが、介護予防・認知症予防を取り入れたメニューを打ち出しています。
今回、ここまでお伝えした内容が、「いつまでも元気でいたい」「認知症になりたくない」「介護が必要な身体になりたくない」「でも1人で運動するのも大変だし・・・」このように不安を抱えている方や、これからも元気に暮らしていくために身体を動かしたいと思っている方にとって参考になれば幸いです。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。