【目次】
- ∨まえがき
- ∨認知症検査は‟どうなったとき”にすればいいのか
- ∨認知症検査を受ける際のチェックポイント
- ∨認知症検査って何をするの?
- ∨認知症検査って費用はどれぐらい必要?
- ∨認知症検査はどこの病院に行けばいいの?
- ∨認知症検査に行くのを嫌がられたら・・・
- ∨認知症検査についてまとめます
まえがき
「家のおじいちゃん、どうも最近、物忘れがひどくなったような気がする・・・」「何度も何度も同じことを聞いてくることが増えたような・・・」日々、ご高齢者さんと一緒に暮らしているご家族の中には、最近、このようなことを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以前よりも明らかに忘れっぽくなった。人の名前や今日の日付がなかなか思いだせなくなった。誰でも歳を重ねれば少しは忘れっぽくなるものですが、これがもしも「認知症」の症状の始まりだったとしたら・・・どうしますか?
「歳相応の物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違いをご存知ですか?この2つには明確な違いがいくつかあります。では、その「歳相応の物忘れ」と「認知症による物忘れ」の「明確な違い」を以下に記してみます。
歳相応の物忘れ
「あれ?今日、朝ごはんのおかず、何だったかな・・・」
このように、「朝ごはん」を食べたという「ご飯を食べたという体験じた事実」は自分で覚えている、もしくは思い出すことができますが、「朝ごはん」の「おかず」が何であったかと言う、断片的なことを忘れてしまっている。また、自分が「朝ごはん」のおかずの一部を忘れてしまっているという、「自分で何かを忘れてしまっている」という「自覚」もある。
このような状態は、歳相応の物忘れです。
そして、「歳相応の物忘れ」では、忘れてしまったことに対して、身近にいた人がちょっとしたヒントを与えてあげると殆どのケースで思い出すことができます。
例えば、先ほどの「朝ごはん」の例であれば、「おばあちゃん、さっき、今日のお魚は美味しいって言っていたよ」などと伝えてあげると、「そういえば、今日は白身の魚が出たかね?」などと、時間がかかっても自分でなんとか思い出すことができます。
また、忘れてしまったことで、パニックになったり、怒りっぽくなったりなど、認知症の初期症状にあるような症状が出ることは無く、日常生活に支障が出ることもありません。
「認知症による物忘れ」と「歳相応の物忘れ」について解説した記事を記しますので、ぜひ参考にしてください。→「認知症をわかりやすく説明するとこうなります。」
認知症による物忘れ
では「認知症による物忘れ」は「歳相応の物忘れ」とどう違うのか、先ほどの「朝ごはん」を例にして解説してみましょう。
先ほど、「歳相応の物忘れ」では、断片的なことは忘れてしまうが、「ご飯を食べたという自分が経験した体験」は覚えているとお伝えしました。
これが「認知症によるもの忘れ」になると、「ご飯のおかず」だけではなく、「ご飯を食べたという、自分が体験した出来事」すべてを忘れてしまいます。ついさっき、みんなでご飯を食べていたこという「出来事」が頭のなかからすっぱりと抜け落ちてしますのです。
出来事のヒントになることすら思い出せませんから、一緒にその場にいた家族が、何かヒントを与えても、思い出すこともありませんし、認知症の物忘れが進んでくると、出来事を思い出させようとすることで、相手パニックになったり、ひどい時には、突然怒りだしたりすることもあります。
これが、「歳相応の物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違いです。
このように、「歳相応の物忘れ」と「認知症による物忘れ」は似ているようでいて、実は見分けが難しく、毎日一緒に暮らしているご家族であっても、気が付いたときには、すでに「認知症」の症状が始まっていた・・・このようなケースも多々見られるのです。
このようなことにならないためには、早期発見と早期の対応がとても大切になります。そして、早期の発見をするために、必要なこと、それは事前の検査です。
では、今回は、その、認知症の症状を見のがさないために必要となる「認知症検査」について、検査の内容や検査方法、検査に必要となる費用などについて解説していこうと思います。
認知症検査は‟どうなったとき”にすればいいのか
では、ここからは、日々一緒に暮らしているご家族やご高齢者さんの様子がどのようになったとき、認知症検査をおこなえばよいのか、どのような変化があったときに検査をすればよいのか、また、変化や初期症状などを見逃さないためには、どのようなことに気を付ければよいのか、などについて解説してみようと思います。
認知症検査を受ける際のチェックポイント
まず、毎日一緒に暮らしているご家族やご高齢者さんに、どんな変化があったときには要注意なのか、参考にしていただきたい項目を以下に記してみますので、確認してみてください。以下に記した項目に思い当ることがもしもあったら要注意です。
※なお、このチェック項目は、「公益社団法人 認知症の人と家族の会」のホームページを参考に、一部加筆を加えたものとなっています。
「引用元:公益社団法人 認知症の人と家族の会 「認知症」早期発見のめやす」
電話をしたばかりの相手の名前をすぐに忘れる
ついさっき、電話で話をしていた相手の名前をすぐに忘れてしまう。近くで様子を見ていた家族が「誰と電話していたの?」などとたずねても、相手の名前が出てこない、もっとひどい時には、電話をしていたことすら忘れてしまっていることもある。
同じことを何度も何度も聞いてくる
今さっき聞いたことを何度も何度も聞いてくる。「今日は何日だったかね?」「次に病院に行く日はいつ?」などと聞いてくる。こちらから「病院は〇日です。」「今日は〇日の〇曜日です」などと説明しても、すぐに同じことをたずねてくるようになった。
自分で片づけたものをどこにしまったかすぐに忘れる
自分の私物を片付けた後、どこにしまったのか忘れて、家族に助けを求めてくることが毎日のように起こる。ひどい時には、夜中や早朝に、思い出したように家族に助けを求めてくる。
家族が一緒になって探してあげて、本人のわかりやすい場所に置いてあげるなど、相手のことを考えて、わかりやすいように工夫などをしてあげても、せっかく見つかった物を、また違う場所にしまい忘れてしまうようになった。
自分で片づけ忘れたことを人に盗まれたと騒ぐ
財布や時計、衣類など、自分が普段大事にしているものなどを、タンスや押し入れなどに片づけたことを忘れ、しまった場所が思い出せず、自分でどこにしまったかも思い出せず、最終的に、自分以外の誰か(家族や同居人など)に「盗まれた!」などと疑いの発言をするようになった。
部屋がいつも汚れている。身の回りの片付けができなくなった
最近、部屋の中が汚れているようになった。こちらから言わないと、汚れていても同じ服を着ていることがある。部屋の中の片付けなどができなくなった。自ら片づけようともしなくなった。
経験したことの無いことや、新しい出来事に対応できなくなった
習慣化したことには対応できても、今までに経験したことの無い出来事にとっさに出会ったとき、今までは、なんとなく自分で新しい出来事にも対応できていたのに、最近では、戸惑い、慌て、ひどい時にはパニックになったり・・・
また、新しい出来事を何度も説明してみても、覚えられない。何度も教えているうちに混乱したりもする。
話しをしているうちに会話の内容が合わなくなってくる
こちらからの問いかけの内容が理解でき無くなり、話のキャッチボールができなくなった。
食事の献立の話をしているのに、突然、明日の外出の予定について、話しはじめたり、すでにいない人(他界した家族など)の想いで話しを始めたりする。一緒に話しをしていても、会話のつじつまが合わなくなることが多くなった。
約束した日日や時間、約束の内容などを間違えるようになった
近所の顔見知りと外出の約束をしていたのに、当日になっても準備をする様子がないので、家族が心配になってたずねてみたら、本人は約束の日にちを間違えていた。
当日になって、家族も心配になったので、「待ち合わせ場所まで車で送っていく」と本人に提案したが、本人は「1人で心配ない」と言ったので1人で外に出した。だが、結局、待ち合わせ場所を間違えて、約束の時間もオーバーした。その他にも、通院の日時や、町内会の会合の時間などをよく間違えるようになった。昔から通いなれた道なのに最近はうっかり間違えが多くなった。
ちょっとしたことでもすぐに怒るようになった
昔だったら、笑って済んだことでも、最近では「なんでそんなことで・・・」と言うようなことでもすぐに怒るようになった。
「食事が出てくるのが遅い!」「風呂がぬるい!」など、ほんの些細なことですぐに怒るようになった。しかも、怒り出すと、怒りが治まるまで時間もかかる。
他人への気遣いができなくなり、わがままになった
病院の待合室などで、順番を待っているとき、以前であれば、多少、自分の順番が遅くなっても「予約の人が先になったのかな・・・」ぐらいに、気遣いや配慮ができていたのが、最近では、順番が変わったりすると、すぐに怒るようになった。
順番が変わる理由があったとしても、理由も聞かずに、自分の言い分を通そうとするようになった。
夕方や寝る前になるとやたらと心配事を訴えるようになった
日が暮れて、夕方になり、もう寝る時間になると、急に「〇〇が見つからない・・・」「明日は病院?」などと、昼間でも十分に対応できることでも、問題が解決するまで、家族を追い回すようになった。
以前であれば、1人で留守番もできたが、今では、1人でいることが不安で仕方ない様子で、こちらも心配で1人で家に置いておくことはできなくなった。
出かける際、忘れ物は無いか何度も確かめるようになった
ちょっとした散歩や外出でも、「家の鍵は持った?」「部屋の戸締りは?」などと何度も確かめる。買い物に出かける際には「忘れ物は無いか?」「財布は持ったか?」など、何度も部屋に戻って確かめるようになった。一度確かめても、忘れたかのように、また同じことを確かめるようにもなった。
自分で自分のことを「最近、おかしくなった」と言う
いつも不安そうな顔をこちらに向けて「最近、頭がおかしい・・・」や「わけがわからなくなる」など、不安を毎日のように訴えるようになった。
「そこまで心配しなくてもいいのに」と家族が思うほどに、自分のことを見下すような発言も最近では多くなった。
季節感の無い服装を着たり、何日も同じ服を着るようになった
以前は、毎日、着るものを自分で選んで、人前に出るときなどには、それなりにオシャレに気を使っていたが、最近は、季節感の無い服装をしていたり、外出する時でも、前の日に着た同じものをそのまま着ていたりもするようになった。何日も着ている服が汚れていても、あまり気にする様子も無い。
いつも好んで見ていたテレビや雑誌に興味を示さなくなった
以前であれば、毎週欠かさずに見ていたテレビ番組や、好んで読んでいた雑誌や新聞に、最近ではほとんど興味を示さなくなった。本人が以前は好きで見ていたテレビをつけてみても、なんとなく画面を眺めているだけで、あまり興味を示さない。それ以外にも、好んで出かけていた外出先や、馴染みの店などへも出かけることが少なくなった。
何をするにも億劫な様子・・・
外出することも無く、自分で何かをする様子も無く、家に引きこもることが多くなった。家にいても、テレビをただ眺めているか、暇さえあれば部屋で寝てばかりいる。外へ連れ出そうとしても、面倒なのか、すぐに家に帰ろうとする。
認知症検査って何をするの?
では、ここからは、認知症検査では、どのような検査がおこなわれるのか、実際におこなわれる検査の内容や、どのような検査結果が出ると、認知症と診断されるのかなどについて解説していこうと思います。
まずはじめに、医師による診察がおこなわれます
認知症の検査では、まず、医師による診察と質問形式による「知能検査」がおこなわれます。
診察では、ご本人と医師だけによる対面ではなく、ご本人からの拒否がなければ、普段一緒に生活されているご家族や介護者様が同席のもとにおこなわれます。
診察は以下のような内容でおこなわれます。
ご本人の普段の生活状況を尋ねられます
ご本人とご家族も交えて(ご本人がご家族の同席を拒否された場合にはご本人のみ)普段の生活の様子を質問形式でたずねられます。質問の内容は以下のような内容が多いようです。
1)起床時間・就寝時間(眠りの浅い深いも確認されます)
2)食事の量(回数も確認されます)
3)排泄の状況(失禁の有無などを確認されるときもあります)
4)物忘れの有無(ご家族に確認されるケースもあるようです)
5)介護の有無(生活の中で困っていることの有無を確認されることもあるようです)
6)ご家族への聞き取り(ご家族の悩みや困りごとなどへの聞き取り)
血圧測定や聴診などの診察がおこなわれます
ご本人、ご家族を交えての問診の次は、身体状況や病歴を確認するために、血圧測定や血液検査、尿検査、検便などの検査がおこなわれます。
こういった一般的な検査の目的は、認知症を発症する原因となりかねない「合併症」や「生活習慣病」の有無を確かめる目的や、今後、認知症の原因となる病気を発症する可能性の有無を確かめる目的もあるようです。
この他に、手や足のマヒの有無や、歩行状態の確認、視力、聴力の検査などもおこなわれます。
認知機能のテストがおこなわれます
認知症の検査では、認知症であるかを診断するために、問診などの他に、認知機能のテストがおこなわれます。
※認知機能とは?
「引用元:認知機能の見える化プロジェクト」
この「認知機能のテスト」で使われているテストには、さまざまなものがありますが、その中でも代表的なものに「長谷川式スケール(HDS-R)」というテストがあります。
このテストは、1974年に精神科医である長谷川和夫氏が開発した簡易知能検査で、「長谷川式認知症スケール」と呼ばれています。また、このテストの内容は、1991年に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として質問項目と採点基準などの改訂がされました。
この「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」は、9つの評価項目から構成されていて、それぞれの項目に見当識や記憶、計算など認知機能を評価するために重要な要素が含まれています。
※改訂長谷川式簡易知能評価スケールではこのようなテストをおこないます。https://www.chiba.med.or.jp/personnel/nursing/download/text2012_10.pdf
改訂長谷川式簡易知能評価スケールには、次のような特徴があります。
1)約5から10分という短時間でテストができる。
2)認知症のスクリーニングテストとして日本では主流である。
3)20点以下/30点満点で認知症の疑いが発見できる。
4)多くの医療機関で使われていて、テストの妥当性が高いと言われている。
ではここでいくつかテストの内容をご紹介してみます。
(1) 年齢
【問い】「年齢はいくつですか?」と質問する
【点数】1点 or 0点:本人の年齢が答えられたら正解で1点。不正解は0点。
(2) 日付の見当識
【問い】①今日は何年ですか ②何月ですか ③何日ですか ④何曜日ですか
【点数】① 1点 or 0点:年が答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】② 1点 or 0点:月が答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】③ 1点 or 0点:日にちが答えられたら正解で1点、不正解は0点
【点数】④ 1点 or 0点:曜日が答えられたら正解で1点、不正解は0点
このような9つのテスト内容を行った結果、30点満点中、20点以下の結果が出た場合に認知症の疑いがあると言われています。
また、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の評価方法について、詳しく解説している文献を以下にご紹介します。
※「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)の使い方
認知機能テストに関しては、ここでご紹介しました「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」以外にも
以下のようなテストがありますので、参考までにご紹介します。
MMSE-J(認知症スクリーニング検査)
MMSE-J(認知症スクリーニング検査)とは、Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)を略した名称です。※MMSE-Jの末尾に記載されている「J」は日本語版を意味する、「JapaneseのJ」です。
MMSEは日本語で「精神状態短時間検査」と言って、10~15分程度の短い時間で認知機能の障がいがあるかどうかを調べる検認知機能検査です。
この検査は、米国のフォルスタイン夫妻が1975年に認知症の疑いのある人のために作り、1975年に公表されました。認知症のスクリーニングテストとしては、世界的にもっともよく活用されていて、2006年に杉下守弘先生によって日本語版が作成されました。これが先ほどお伝えした、MMSE-J(認知症スクリーニング検査)で、「長谷川式スケール(HDS-R)」と並んで、現在日本でも多くの医療機関で活用されている認知症の検査です。
MMSE-J(認知症スクリーニング検査)のテスト項目は11の設問で構成されていて、全問正解すると「30点満点」、30点満点中、23点以下で認知症の疑いがあると診断され、27点以下では、軽度認知障害(MCI)の疑いがあると診断されます。
※軽度認知障害(MCI)とは?
「引用元:アルツハイマー病情報サイト」
MMSE-J(認知症スクリーニング検査)では以下のような質問されますので、一部ご紹介してみようと思います。
「引用元:https://yoshiya-hasegawa.com/life_doctor/mmse.pdf」
ご紹介している画像にあるように、各設問に答えてもらい、正解数を右の特典の欄に記入します。
また、質問の際には、ご本人のその時の状態も加味し、できるだけ、本人のペースに合わせてテストはすすめられます。
参考までに、11のテスト項目すべてが記載された用紙をご紹介します。
※MMSE(認知症スクリーニング検査)11のテスト項目の用紙
https://yoshiya-hasegawa.com/life_doctor/mmse.pdf
認知症の検査では、他にもさまざまな認知機能テストがありますが、ここでご紹介した、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)とMMSE-J(認知症スクリーニング検査)はその中でも代表的な2つです。多くの医療機関でも、この2つの認知機能テストが取り入れられていますので、これから認知症検査をご検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
画像診断で脳の状態を調べます。
医師との問診や、認知機能テストの結果、医師が認知症の疑いがあると診断し、脳の状態や萎縮の度合いなどを調べる必要があると判断した場合には、脳の状態を調べるために画像検査がおこなわれます。
画像検査は主に以下に記す、3つの検査がおこなわれているようです。
CT(コンピューター断層装置)
CT(コンピューター断層装置)はよく病院の検査や健康診断などで「CT検査」と呼ばれているものと同じ検査です。身体にエックス線を照射し、コンピュータ―で画像を処理することで、身体の内部を調べます。
認知症の診断で「CT(コンピューター断層装置)」をおこなったとき、脳全体の萎縮が見られると、「アルツハイマー病」の疑いがあると判断されます。また、「CT(コンピューター断層装置)」では、脳内の出血の有無を発見することもできて、脳血管性認知症の原因となる「脳出血」や「クモ膜下出血」などを発見もできます。
これ以外にも、脳の外側に血液がにじみ出て、脳を徐々に圧迫する「慢性硬膜下血種」や脳の中に膿のかたまりのようなものができる「脳膿瘍」といった病気を発見することもできるのがこの「CT(コンピューター断層装置)」です。
MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)
「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)検査」は、X線撮影やCTのよう にX線(放射線)を使うことなく、代わりに強い磁石と電波を使い、体内の状態を断面像として画像化する画像診断検査です。
人の身体に強い磁力をあてると、金属だけではなく人間の身体の細胞を作っている分子の並び方に微妙な変化が起こります。その分子の並び方は、水や脳、骨ではそれぞれ違っていて、その違いを利用し、撮った画像をコンピューターで計算し、断層写真にします。これが「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」です。
先ほどお伝えした「CT(コンピューター断層装置)」と違い、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」では、脳の底にある「小脳」や「脳幹」といった熱い骨に囲まれていて、X線では乱れがおこり、CT(コンピューター断層装置)ではうまく画像にできない場所でも、MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)ならばその個所の構造や病変をとらえることも可能だそうです。
また、「CT(コンピューター断層装置)」に比べて細かい変化がわかりやすく、「CT(コンピューター断層装置)」ではわかりにくかった小さな脳梗塞なども見つけることができるそうです。
PET(ポジトロン断層撮影)
PETとは「positron emission tomography (陽電子放出断層撮影)」 の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種です。
認知症の画像検査ではCTやMRIが脳の形を可視化するのに対し、PETでは 放射性薬剤を体内に取り込ませ、放出される放射線を特殊なカメラでとらえて「脳の働き」を画像化します。
「CT(コンピューター断層装置)」や「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」では、頭部、胸部、腹部などと、部位に絞って画像を撮って検査をおこないますが、PET(ポジトロン断層撮影)では、全身を一度に検査することができます。
PET(ポジトロン断層撮影)検査では、通常、がんや炎症を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されています。また、アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われています。
脳では常時大量のブトウ糖が消費されているが、脳のPET(ポジトロン断層撮影)検査では、ブドウ糖の代謝を見ることでアルツハイマー病などの初期症状も見つけることができるようです。ただし、このPET(ポジトロン断層撮影)をおこなえる病院は現在、限られた場所になっていて、検査を希望する際には近隣の総合病院などで確認する必要があるでしょう。
「引用元:国立国際医療研究センター病院 ホームページ」
http://www.hosp.ncgm.go.jp/s037/010/010/pet.html
認知症検査って費用はどれぐらい必要?
先ほどまでは、認知症検査でおこなわれる、医師の問診や、画像診断などの検査内容などについて、解説してきましたが、ここでは、検査をおこなった際に発生する「検査の費用」について解説してみようと思います。
認知症検査での診察費用
認知症検査での診察では、医師の問診の他に、血液検査や血圧測定、聴診などの他に、「長谷川式スケール(HDS-R)」などの「認知機能のテスト」がおこなわれます。
この際の費用ですが、「認知機能テスト」をおこなった結果、医師が「CT(コンピューター断層装置)」や「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」などの画像検査をおこなう必要がないと判断すれば、費用はおおむね、数千円程度で済むようです。
CT(コンピューター断層装置)
認知症検査で、医師から画像検査の必要が判断されると、大多数の医療機関では、まず、CT(コンピューター断層装置)による画像検査が行われます。
画像検査がおこなわれるときは、画像検査の前に、医師の診察と「長谷川式スケール(HDS-R)」などの「認知機能のテスト」がおこなわれますので「CT(コンピューター断層装置)」をおこなったさいの費用には、「画像検査」の費用の他に「診察料」と「長谷川式スケール(HDS-R)」などの「認知機能のテスト」の費用が含まれます。
これらも含んだ「CT(コンピューター断層装置)」では、おおむね数千円で済むようです。
MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)
「CT(コンピューター断層装置)」をおこない、その結果、さらに精密な画像検査が必要と判断した場合には、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」検査がおこなわれることが多いようです。
「CT(コンピューター断層装置)」と「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」には大きな違いがあり、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」では、脳の底にある「小脳」や「脳幹」といった熱い骨に囲まれていてX線では乱れがおこり、「CT(コンピューター断層装置)」ではうまく画像にできない場所でも、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」ならばそのカ所の構造や病変をとらえることも可能です。
また、「CT(コンピューター断層装置)」に比べて細かい変化がわかりやすく、「CT(コンピューター断層装置)」ではわかりにくかった小さな脳梗塞なども見つけることができます。
この際の費用負担ですが、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」検査だけをおこなった場合は、先ほどの「CT(コンピューター断層装置)」と同じように、「診察料」と「長谷川式スケール(HDS-R)」などの「認知機能のテスト」の費用が含まれる場合が多いようです。この際の費用は、おおむね保険適用で数千円から1万円弱の費用負担になることが多いようです。
ただし、費用に関して注意が必要なことが1つあります。それは、「脳ドック」などの健康診断などで、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」をおこなった場合には、保険適用にならない場合があります。
また、今現在、認知症への心配もないが、少し心配になったので、「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」を希望された場合、健康保険の対象とならずに「自費診療」の扱いになる場合もあります。「自費診療」になった場合の費用は、数万円になる場合もあるようです。
PET(ポジトロン断層撮影)
PET(ポジトロン断層撮影)がおこなわれるときは、PET(ポジトロン断層撮影)をおこなうまえに、すでに「CT(コンピューター断層装置)」や「MRI(核磁気共鳴コンピューター断層装置)」をおこなった結果「PET(ポジトロン断層撮影)検査」が必要と、医師が判断した場合におこなわれます。
「PET(ポジトロン断層撮影)検査」の費用ですが、単独でおこなったばあいの費用でも、保険適用で数万円になる場合もあるようで、「CT(コンピューター断層装置)」などと比べると、費用負担が大きいのもこのPET(ポジトロン断層撮影)検査です。
また、検査の内容によって、一部保険の対象外になる場合もあるようです。詳しくは、「PET(ポジトロン断層撮影)検査」を実施している病院などに事前に確認してみてください。
認知症検査はどこの病院に行けばいいの?
ここまで、認知症検査でおこなわれる検査の内容や、検査費用などについて解説してきましたが、実際に認知症検査をおこなってもらうために、「どこにある、どの病院」に行けばよいのか、解説してみようと思います。
認知症検査の専門医がいる病院を探しましょう
認知症検査をおこなうには、認知症の専門医が在籍している病院を探しましょう。では、その病院をそうやって探すのか、探す方法にはいくつかの方法がありますので、以下に記します。
普段お世話になっている、かかりつけ病院のお医者さんに尋ねてみる
普段お世話になっている「かかりつけのお医者さん」に、自宅から一番近いところにある「認知症の専門医」がいる病院はどこなのか、尋ねてみると良いでしょう。
かかりつけのお医者さんから紹介状などを書いてもらうと、検査がスムーズになるなどがありますので、自分でどうやって探せばよいかわからなくなったら、まず、普段お世話になっている「かかりつけのお医者さん」に尋ねてみてください。
介護の専門家に尋ねてみる
ご自宅の近所に「地域包括支援センター」という場所があります。この「地域包括支援センター」は
介護の専門家である「ケアマネジャー」社会福祉にかかわる制度などに精通した「社会福祉士」医療の専門家である「看護師」の3名が常駐している、介護保険制度で定められた「介護の総合相談窓口」です。
※地域包括支援センターとは?
「引用元:東京都練馬区ホームページ」
この「地域包括支援センター」では、介護の専門家である「ケアマネジャー」などが、地域福祉や医療の情報を数多く持っていますので、自宅近隣で「認知症の専門医」が在籍している病院を電話などでたずねてみても良いでしょう。
※自宅の近くの地域包括支援センターを探してみる。
「引用元:一般社団法人 認知症予防協会」
認知症検査の専門医をインターネットで探す
インターネットで「認知症専門医」などを探す方法もあるので、認知症専門医などが探せるホームページを以下に記しますので参考してみてください。
インターネットで「認知症専門医」などを探す方法もあり、認知症専門医などが探せるホームページを以下に記しますので参考してみてください。
1)全国の「もの忘れ外来」「認知症外来」などをご覧いただけます
「引用元:公益社団法人 認知症の人と家族の会 ホームページ」
2)高齢者のこころの病と認知症に関する専門医制度 専門医の検索
http://184.73.219.23/rounen/a_sennmonni/r-A.htm
「引用元:公益社団法人 日本老年精神医学会 ホームページ」
3)日本老年精神医学会認定 こころと認知症を診断できる病院&施設
http://184.73.219.23/rounen/H_sisetsu/r-H.htm
「引用元:公益社団法人 日本老年精神医学会 ホームページ」
4)日本認知症学会認定専門医
http://dementia.umin.jp/g1.html
「引用元:日本認知症学会 ホームページ」
認知症検査に行くのを嫌がられたら・・・
ここまで、認知症検査について、検査の内容や費用、検査ができる病院の探し方などについて解説してきましたが、ここでは、「認知症検査に行くことを拒否されたらどうすればいいのか」「認知症検査に連れ出そうとしたら、怒りだした」このことは、ご高齢者を病院に連れて行くときによくおこることです。
では、このようなときに、嫌がられずに本人を検査に連れていくにはどうしたらよいのか、このようなことが起きたときにどのように対応すればよいのかについて、事例も交えながら解説してみようと思います。
認知症や物忘れなどの言葉を使わないこと
検査に連れ出す際に、認知症検査、認知症、物忘れなど、ご高齢者にとって、ネガティブなイメージと取られる言葉は避けましょう。では、どのように伝えたら相手に嫌がられないか、それは「1年に1回ぐらい、一緒に検査に行きませんか?」「役所から健康診断のお知らせが来てるから、行きましょうか」など、「病院に行く」これだけを伝えてください。
病院に着けば、認知症検査に来たことに気が付くかもしれませんが、検査をする医師もその辺は心得ていますから、ご高齢者のプライドを傷つけるような言葉は避けてくれますし、検査も一般的なレントゲンや診察が主ですから、まず、連れ出す際には、「認知症」や「物忘れ」といった、相手のプライドを傷つける言葉を使わないよう注意してください。
「ちょっと出かけるから・・・」などと曖昧なウソはつかないように
これはよくありがちな失敗パターンですが、検査に連れ出すための苦肉の策として、「ちょっと、そこまで一緒に買い物に行きませんか?」や「私が病院に行くから一緒についてきてくれない?」などとあからさまにウソをついて連れ出したりしないでください。連れ出すことには成功しても、連れてった先が、買い物のお店ではなく、病院だった。それも、認知症検査の白衣の専門医が待っていた。これはどんなご高齢者でも怒り出します。
連れ出すことに失敗したら、その日は避けて、後日に相手の機嫌なども見ながら、「病院に行きましょうか」「健康診断に行きましょうか」と言うように、「病院に行きますから」と相手に行き先をきちんと伝えてあげて、相手が納得したら検査に連れて行くようにしてください。
認知症検査についてまとめます
ここまで、認知症検査について、検査の内容や費用、どのようなときに検査が必要になるのか、どのような状態になったら検査をおこなうべきなのか、などについて解説してきました。
認知症は早期発見、早期の対応がとても大切です。今後、認知症高齢者の数は増加をたどることが確実で、平成24年(2012年)の推計では、認知症高齢者の数は462万人と推計され、65歳以上の高齢者の7人に1人(15%)が認知症でしたが、今後その数は増加していくと言われていて、2025年(平成37年)には、5人に1人が認知症になるという推計もあります。
「引用:厚生労働省 認知症高齢者数の推計」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
私たちの暮らしている日本は、少子高齢化社会であり、今後、高齢者の数が増えていきます。そして、一緒に生活している家族がいつ認知症になっても不思議ではありません。そうなったとき、認知症への対処や、その後に始まるかもしれない介護にそなえるためにも、早期発見し、早期の対応をおこなうためにも、今回お伝えしてきた、認知症検査についてお伝えした内容が、少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までおつきあいくださり、誠にありがとうございました。